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Aug 22-23, 2009
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1.新型インフルエンザ:重症多発の恐れ 脳症対策を強化 小児科学会「早期受診を」
2.新型インフル 妊婦の対応に苦慮、医師不足に設備も限界
3.「新生児・乳児にもタミフル投与」 WHOが指針
4.死亡相次ぐ新型インフル ハイリスク者の重症化防ぐには?
5.タミフル耐性は確認されず 死亡患者らのウイルス解析
6.メタボ患者、新型インフル死亡率上昇の恐れ
7.【主張】新型インフル 限られたワクチン有効に
8.チリで七面鳥から新型インフル 人・豚以外から初
9.初期甲状腺がんの治療に見る韓日の違い
10.感染性白血病が都市部で増加…予防策徹底せず
11.新型インフルエンザワクチンで薬害を起こさないために
12.新型インフルエンザと輸血の問題をもっと議論しよう―日赤プレスリリースに思うこと―
13.新型インフルエンザA(H1N1)の流行状況-更新12
14.Pandemic (H1N1) 2009 - update 62
15.医薬品情報:【新薬】モメタゾンフランカルボン酸エステル
16.Swine Flu Vaccine Seems Safe in Early Trials
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1.新型インフルエンザ:重症多発の恐れ 脳症対策を強化 小児科学会「早期受診を」
毎日新聞社2009年8月23日

 新型インフルエンザが全国的にも流行状態になる中、日本小児科学会(横田俊平会長)は、新型インフルエンザで急性脳症の小児患者発生が続いているとして、意識障害などの疑わしい症状があれば医療機関で速やかに受診するよう国民に呼びかけを始めた。多数の脳症患者が発生する恐れがあり、同学会は重症患者への対応に万全を期すよう各地域で診療体制の整備に着手した。
 インフルエンザ脳症は6歳以下の子供に多い。小児の脳症例は21日までに国に6例報告され、22日も千葉県市原市で1件報告されている。症状は急激に変化し、高熱の後、突然、けいれんが続いたり、意味不明の言動や意識障害を起こす。体内のウイルスへの免疫反応が激しすぎて脳が腫れたり、血管や臓器が傷ついて発症するとみられている。
 厚生労働省研究班代表の森島恒雄・岡山大教授(小児感染症学)によると、例年の患者は年間約100人で、約25%に脳性まひなどの後遺症が残る。死亡率は、10%弱だという。
 同学会は新型インフルエンザによる脳症の報告例が相次ぎ、集中治療室(ICU)や人工呼吸器による治療が必要となる重症例があったことを重視。その上で「秋冬は幼児でも新型インフルエンザの流行が避けられず、脳症の発症数の増加も危惧(きぐ)される」として、厚労省を通じて注意喚起することにした。
 同学会が保護者らに注意を呼びかけているのは、発熱やせきなどのインフルエンザ症状に加え、脳症を疑う症状があれば小児科などの医療機関で早く受診してほしいという点だ。
 具体的には、呼びかけに答えないなどの意識レベルの低下(意識障害)▽けいれんが続いたり、けいれん後の意識障害▽意味不明の言動--などに気をつけてほしいとしている。一部の強い解熱剤は脳症を重症化させる要因になるとして、自宅の置き薬を勝手に服用したりせず、必ずかかりつけの医師に相談するよう求めた。
 新型の患者が急増すれば脳症の重症例も多発し、地域の医療機関が混乱する恐れがあるとして、小児科学会は各地の会員に対し、重症患者の受け入れ態勢を整備するよう要請した。例えば重症の脳症患者の受け入れ病院や、脳症以外のインフルエンザ患者を診療する病院を指定したり、病状が急変した場合の搬送先病院をあらかじめ決めるなどの対応を検討中だ。
 森島教授は「流行規模によっては患者が数倍に増える可能性がある。重症患者への対応策の整備を急ぐ必要がある」と話している。


2.新型インフル 妊婦の対応に苦慮、医師不足に設備も限界
朝日新聞社2009年8月23日

新型インフルエンザで重症化しやすい妊婦への対応に、産科病院が苦慮している。院内感染を防ぐため、症状のある妊婦は産科の受診を控えるよう呼びかけているが、感染の有無を早期に判断しにくく、患者の振り分けには困難が伴う。深刻な医師不足に加えて、重症者を処置できる設備にも限界があり、打開策が見いだせない状況だ。
 ハイリスクの妊婦に対応する「総合周産期母子医療センター」に指定されている大阪府立母子保健総合医療センター(和泉市)には、母体専用の集中治療室(ICU)や感染症対応の病室がない。光田信明・産科部長は「分娩(ぶんべん)以外の母体の異常には対応できていない。インフルエンザに感染して重症化した妊婦は、母体救急ができる病院に搬送するしかない」。
 同センターには新生児集中治療室(NICU)があり、免疫力が弱い新生児も入院している。糖尿病など合併症を抱えた妊婦の通院・入院も少なくない。それだけに、院内感染の防止は重要課題だ。
 これまで、インフルエンザが疑われる症状がある外来の妊婦について、地域の内科医への受診や、患者と付き添いの家族のマスク着用を求めてきた。来院した場合は産婦人科外来とは別の場所で簡易検査をし、陽性なら抗インフルエンザ薬を渡して帰宅してもらうが、検査で陰性と判定されてしまう感染者も少なくない。光田部長は「完全に隔離するのは難しい」とみる。
 同じ総合周産期母子医療センターの高槻病院(大阪府高槻市)は駐車場に、症状のある外来患者を簡易診断で振り分けるためのプレハブ施設を建てることを決めた。地域の2次救急指定病院でもあり、インフルエンザに感染した一般患者が受診する可能性が高い。5月の流行時にはテントを設置して対応したが、真夏の感染拡大で、空調設備がある診察室が必要と判断した。
開業医も対応に戸惑う。「亀田マタニティ・レディースクリニック」(神戸市灘区)の亀田隆院長は「感染が疑われる全妊婦を総合病院に移せば、そっちがパンクする」。時間外の診療や空き病室での簡易診断など、一定の負担は覚悟しているという。
 岡山県は5月以降、重症化した妊婦を受け入れる病院を募り、3カ所を確保した。担当者は「感染拡大を受けて増やしたいが、周産期センターでも感染者と非感染者を分ける設備が整っていない、と断るところがある」と明かす。


3.「新生児・乳児にもタミフル投与」 WHOが指針
朝日新聞社2009年8月22日

世界保健機関(WHO)は21日、新型インフルエンザに感染した場合、持病のある人だけでなく、新生児や乳児もタミフルやリレンザを服用するべきだ、などとする治療指針を公表した。妊婦やエイズウイルス(HIV)感染者らもリスクが高く、服用が勧められている。
 重症の場合はタミフルが第一選択。指針作成にかかわったけいゆう病院(横浜市)の菅谷憲夫・小児科部長によると、重症例で治療実績があることなどが考慮されている。持病などがない人はタミフル、リレンザによる治療は必要ないとされたことに、菅谷さんは「基本的には全員の治療が望ましい」と指摘する。


4.死亡相次ぐ新型インフル ハイリスク者の重症化防ぐには?
産経新聞社2009年8月23日

 新型インフルエンザによる死者が相次いでいる。沖縄や神戸で亡くなった3人は、いずれも腎臓病や糖尿病など持病を抱えたケースだ。事実上の「本格流行」が始まった今、慢性疾患を持つ患者や妊婦、抗がん剤使用者ら感染すると重症化しやすい人たちの命を守るにはどうすればいいのか。専門家に聞いた。
 毎年1万人前後が亡くなる季節性インフルエンザの死者は大半が抵抗力の弱い高齢者だ。ところがWHO(世界保健機関)や厚生労働省によると、新型インフルエンザで重症化しやすいのは人工透析患者のほか、ぜんそくや心疾患、肺疾患などの慢性疾患を持つ人、抗がん剤や免疫抑制剤の使用者、妊婦、乳幼児など。
 今回、国内初の死亡例となった沖縄県と神戸市の男性は腎不全で人工透析治療中。名古屋の女性も多発性骨髄腫と心不全を患っていた。3人とも重症化の典型例といえる。
 元小樽市保健所長の外岡立人さんは「海外での死亡例の7~8割が妊婦や持病を抱えたハイリスク者。健康な人ならほとんどが軽症で済むが、抵抗力が落ちているハイリスク者は肺炎などを併発して重症化しやすい」と注意を呼びかける。
 ◆米国で妊婦死亡例
 米国では妊婦の死亡例もある。米疾病対策センター(CDC)によると、4月中旬から6月中旬までに新型インフルエンザで死亡した45人のうち6人が持病のない妊婦だった。外岡さんは「米国では新型インフルによる死者の6%が妊婦という報告もあり、発熱で流産の危険性も増す」。
 日本産科婦人科学会では妊婦同士の感染を避けるため、感染の兆候がある場合はかかりつけ産婦人科医ではなく一般病院への受診をすすめている。また、感染が確認された場合には、タミフルなど抗ウイルス薬の積極的な服用を呼びかけている。
 ふだんから持病を抱えて人や妊婦は発熱などの症状にどう対応するのか、かかりつけ医と事前に話し合っておくことも大事だ。「感染初期に抗ウイルス薬を投与すれば重症化を防ぐことは可能だ。せき、鼻水、発熱やのどの痛みなどの症状が出たらすぐに医療機関で受診を」と外岡さん。
◆うつさない配慮も
 秋以降のさらなる感染拡大に備え、リスクを減らすにはどうすればいいのか。
 東京慈恵会医科大(東京都港区)の浦島充佳准教授が第一に挙げるのは、感染者と接触の機会が増える医療機関への受診回数を減らすこと。「ぜんそくや糖尿病など慢性疾患で症状が落ち着いている場合は、薬の長期処方を頼んでみては」と話す。
 家庭や職場など周囲の配慮も欠かせない。家族にハイリスク者がいるケースでは、うがい・手洗いの励行、人ごみを避けるなど、うつさない工夫と思いやりが大切だ。万一、寒けやだるさなど自分に感染の兆候を感じたら、ハイリスク者と食事の時間をずらしたり、部屋を別にするなど早目の対策を心がけたい。
 浦島准教授は「窓がない部屋など密閉空間はウイルスが蔓延(まんえん)しやすい環境にある。大勢が集まる場には、せきや発熱など症状がはっきりしない感染者もいるので、こまめに換気をすることも忘れずに」とアドバイスする。
 ■患者数突出の沖縄
 15日に国内初の死者が出た沖縄県。国立感染症研究所によると、今月16日までの1週間に報告された患者数は1医療機関の全国平均1・69人に対し、沖縄は29・6人と突出している。
 なぜ沖縄で多いのか。東京慈恵会医科大の浦島充佳准教授は「もともと冬がない熱帯気候の地域では、季節性インフルエンザは雨季に流行するケースが多い」と指摘。そのうえで、「地球温暖化のせいか沖縄でもここ数年、梅雨明けの6月から8月に流行のピークを迎える傾向が続いており、新型インフルエンザも同じ時期に感染が拡大したのではないか」と推測している。


5.タミフル耐性は確認されず 死亡患者らのウイルス解析
共同通信社2009年8月23日

 沖縄県は21日、国内初の新型インフルエンザ感染による死亡例と三つの重症例について、患者から採取したウイルスを県衛生環境研究所で遺伝子解析した結果、タミフルへの耐性は確認されなかったと発表した。
 沖縄県では15日に基礎疾患を持つ新型インフルエンザの感染者が死亡。その後も1~13歳の男女3人が重症となった。


6.メタボ患者、新型インフル死亡率上昇の恐れ
読売新聞社2009年8月22日

肥満などメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)や妊娠は、新型インフルエンザによる死亡の危険性を高める恐れがあることが、フランスの研究チームの分析で明らかになった。
 肥満は、これまでの季節性インフルエンザでは死亡の危険因子とは考えられておらず、新型の特徴である可能性もある。研究論文は欧州の専門誌(電子版)に掲載された。
 研究チームは、世界保健機関などが発表したデータをもとに、4月~7月に新型インフルエンザで死亡した27か国の574人を分析。
 生前の健康状態が分かる241人のうち9割に持病があった。
 最も多かったのが、そのうちの3割を占める肥満や糖尿病などのメタボ患者。妊婦は、死亡した20~39歳の女性の3割で、季節性インフルエンザと同様に新型でも死亡の危険性が高まるとみられる。


7.【主張】新型インフル 限られたワクチン有効に
産経新聞社2009年8月22日

 新型インフルエンザの流行が本格化し、ワクチン接種に関する議論がようやく始まった。ワクチンには「流行の拡大を防ぐ」「重症化しやすい人を守る」という2つの目的がある。十分な供給量が確保できれば2つは両立できるが、新しい病原体の感染症ではそれが困難な場合が多い。
 厚生労働省によると、国内で年内に製造できる新型インフルエンザのワクチンは1300万~1700万人分にとどまる見通しだ。希望者すべてに対応できる量ではないので、接種の優先順位について、国民の多くが納得できる基準を打ち出す必要がある。
 今回は患者の大多数が1週間程度で回復しているが、糖尿病、心臓病など基礎疾患を持つ人や妊婦は重症化しやすく、死亡のリスクも高くなる。この点を考え、「重症化しやすい人を守る」ことを優先させるべきだろう。
 厚労省が20日に開いたワクチン接種に関する意見交換会でも、対策の専門家や基礎疾患を抱える患者団体の代表から、重症化のリスクの高い人や医療従事者への接種を優先させるべきだとの発言が相次いだ。意見交換会はもう一度、開かれる予定なので、厚労省はその意見も踏まえ、10月末とされる接種開始の前に具体的な優先順位を示してほしい。
 国内の新型インフルエンザの患者数は5月以降、切れ目なく増えてきた。全国5千の定点医療機関の報告は、すでに季節性インフルエンザの流行開始の目安である「1」を超えている。舛添要一厚労相が「本格流行」を宣言したのも、広く国民に注意を促す時期に来たとの判断からだろう。
 ワクチン接種は大流行に備えた重要な対策の一つだが、すべてではない。早期の治療で妊婦や基礎疾患を持つ人の重症化は防げる。流行の拡大スピードを遅らせ、医療機関に一気に患者が集中するような事態を避けることも大切だ。小さなことだが、うがいや手洗いの励行がその点では大きな効果につながる。
 新型インフルエンザにかかった人が外出を控え、自宅で療養することは、他の人への感染の機会を減らすことにもなる。体調が悪ければ無理して出勤せず、回復するまで休む。企業がそれを徹底すれば、感染防止効果は大きい。ワクチンのみに頼るのではなく、総合的な対策の積み重ねが重要なこともこの際、認識しておきたい。


8.チリで七面鳥から新型インフル 人・豚以外から初
共同通信社2009年8月22日

 【リオデジャネイロ共同】南米チリ保健省は21日、新型インフルエンザが人間から七面鳥に感染したと発表した。ロイター通信によると、新型インフルの感染が人間と豚以外で確認されたのは初めてという。南半球にあり現在真冬の同国ではこれまでに128人の感染死が確認されており、ウイルスの強毒化も予想される。
 感染が判明したのは、首都サンティアゴの西約100キロのバルパライソ州の二つの施設。最近、七面鳥の産卵数が減ったため、当局が調べたところ、感染しているのが分かった。チリ政府は「七面鳥の肉は安全だ」としている。
 鳥インフルエンザの遺伝子と混じり毒性が強まることが懸念されているが、チリ政府は、検査の結果、七面鳥は鳥インフルには感染していなかったと語った。
 チリ保健省によると、今月15日時点で、同国での感染の疑い例は計約35万3600人あり、うち約1万2千人の感染が確認されている。


9.初期甲状腺がんの治療に見る韓日の違い
朝鮮日報社2009年8月23日

ある女性教授の大変な体験
 ソウル大のY教授(39)は、甲状腺がんとの診断を受けてから1年半が過ぎた。しかし彼女は、現在何の治療も受けていない。
 末期がんということで治療を放棄したわけではない。甲状腺のがんはまだ小さいので大きくなるかどうか見守ろう、と病院側が言ったからだ。韓国の女性がかかるがんの第1位は甲状腺がんだが、これは元々進行が遅く「カメのがん」という別名があるため、たとえ問題になっても後で治療すれば生命に影響を及ぼさない、ということだった。彼女に、自信をもってこうした「冒険」を勧めているのは、韓国の病院ではなく日本の病院だ。韓国の病院はすぐに手術を勧めるが、彼女は日本の医療陣の言葉を信じ、その方針に従っている。
 Y教授が甲状腺がんとの診断を受けたのは昨年2月。健康診断で甲状腺を超音波検診したところ、1センチにもならない小さな結節(丸いコブ)が発見された。この時から、韓国と日本の病院を行き来する彼女の「医療旅行」が始まった。
 彼女が初めて訪れた場所は、ソウルの有名大学病院だった。そこで、針を使って細胞を採取する検査を受けた。結果は、甲状腺がんの一種の乳頭がんだった。甲状腺がんの80-90%は乳頭がんだ。医療陣は彼女に、甲状腺全体を除去する手術を受けるべきだと言った。さらに、手術後は甲状腺ホルモン剤を一生の飲まなければならないという。目前に迫る不幸をすんなり受け入れ難かった彼女は、また別な有名大学病院を訪れた。そこでも答えは同じで、3番目に訪れた大学病院も同じ意見だった。彼女が韓国国内で選択できる治療法は、甲状腺の除去手術とホルモン剤の服用だけだった。
 この後、Y教授は国際学術誌の医学論文を読み漁った。すると日本の大学病院では、自分のように甲状腺の乳頭がんの大きさが1センチ以下のケースでは手術を行わず、そのまま見守っているという事実を知った。彼女はこの論文を持って再び韓国の大学病院を訪れた。しかし、この「身の程知らずな」患者に返ってきたのは、医師の怒りだけだった。
 ついに彼女は日本に渡り、東京の「日本がん財団付属病院」(※原文ママ)を訪れた。彼女を診察した日本の医療陣は、手術は時期尚早だと代わる代わる言った。3-6カ月に1度の割合で超音波検診を受けつつ見守ろう、と言った。さらに、こうしたことを言う理由が詳細に記された3ページの説明書を出してくれた。その内容を要約すると、こうだ。
「日本では、健康診断で超音波検診をすると、100人に1人の割合で大きさ1センチ以下の乳頭がんが発見される。当初は“初期甲状腺がん”と見なされ、発見され次第手術した。しかし他のがんとは異なり、小さな甲状腺乳頭がんは時間が経ってもほとんど進行せず、生命にも直接的には影響を及ぼさない場合が多いことが分かってきた」
 説明文はさらに続く。
 「その根拠として、日本で甲状腺ではない他の原因で死亡した人を調査してみると、14-28%の人から大きさ1センチ以下の乳頭がんが発見された。これはまさに、その人々が生きていた間、何らの症状もなく、知らないまま過ごしていたことを意味する。日本で甲状腺がんのために亡くなる人は、がんによる死亡者23万人の内0.4%。大きさ1センチ以下の乳頭がんの99%は、人体にいかなる害も及ぼさず、潜伏状態にあり、観察するだけで差し支えはなく、(すぐさま)治療をする必要はないと考えられる」
 ただし大きさ1センチ以下だとしても、がん細胞が甲状腺の周辺のリンパ節まで広がっていたり甲状腺の外に出て声帯を動かす神経などを冒している場合などは、手術が必要だ、と日本の医療陣は説明した。Y教授のケースは、これには該当しなかった。こうした治療方針は、日本にある他の主要病院で共通して用いられていることも分かった。そこで彼女は、手術を「果敢に」控えることに同意した。現在は、3-6カ月に1度の割合で超音波検診だけを受けている。Y教授は、「手術で根本的な治療を施すことが間違いだということはできないが、切迫した理由もなしに、後遺症が残るかもしれない手術は望まない。韓国の病院は、患者に選択の余地を与えないのが残念だ」と語った。
なぜ韓国の病院は甲状腺がんを無条件に手術するのか。2007年、甲状腺を扱った経験を持つ韓国の内分泌内科・外科・放射線科などの教授が集まり、甲状腺がんの診療勧告案を作った。勧告案によると、甲状腺がんと診断された場合、大きさや種類に関係なく手術することになっている。大きさ1センチ以下であっても、細胞検査でがんだと疑われれば手術を勧告する。
 ソウル峨山病院内分泌内科のキム・ウォンベ教授は、「がんの治療方針は国ごとに違いがあり得る。大きさ1センチ以下の乳頭がんであっても、手術してみるとがん細胞がリンパ節に転移していたケースが約30%あるため、手術を原則としている」と語った。リンパ節への転移があると再発率は高くなる、とキム教授は付け加えた。
 世界の医学界では、リンパ節転移があっても甲状腺がんは十分に治療でき、ゆっくりと進行するので患者の長期生存率に変化はない、という意見もある。
 甲状腺がんは、男性より女性の方が4-5倍多くかかるが、韓国の女性の甲状腺がんによる死亡率は、人口10万人当たり1.1人(07年)。一方日本では、10万人当たり1.6人(06年)で、両国間で、死亡率に統計学的な差異はない。甲状腺がんの患者の生存率は、95-99%だ。
 最近、韓国の女性の間で甲状腺が急増し、現在では女性が発症するがんとしては第1位になっている。99年の段階で、1年間に新規発生した患者の数は2751人だった。しかし07年には、1万4724人へと5.4倍に増えた(国民健康保険公団)。甲状腺がんの発生そのものが増えたというよりは、超音波診断が普及することで甲状腺がんが数多く発見されるようになったのが理由だ。これらの患者のほとんどは、甲状腺の全摘手術を受けている。
 韓国国立がんセンターの朴恩澈(パク・ウンチョル)国家がん管理事業団長は、「現時点では、どの治療方針が正しいと主張できるだけの長期的な研究データがない。大きさが小さい甲状腺がんの場合、手術による利得が大きいか、損失が大きいかを比較する調査が必要だ」と語った。


10.感染性白血病が都市部で増加…予防策徹底せず
産経新聞社2009年8月22日

母乳を通じて母子感染し、白血病などを引き起こす危険性のあるウイルスの感染者が都市部で増加していることが21日、分かった。厚生労働省研究班が行った約20年ぶりの調査で、関東の感染者は1・4倍、中部は1・5倍に増加。従来多かった九州・沖縄では減少している。局地的な感染が多く、全国的な対策が取られてこなかった。交通手段の発達で感染地域が拡大したとみられ、研究班はガイドラインの作成に乗り出した。
 ウイルスは「成人T細胞白血病ウイルス(HTLV-1)」と呼ばれ、感染すると50年前後の潜伏期間を経て、3~5%の人が白血病を発症するとされる。毎年約1千人が発症しているとみられ、発症すると半分近い人が1年以内に命を落とす。前宮城県知事の浅野史郎さん(61)が6月に発症を発表し、関心を集めた。
研究班は、18~19年の献血者約120万人の血液から各地の感染者数の割合を推計し、昭和63年から平成2年の前回調査と比較。国内の感染者を108万人と推計した。前回調査では120万人だった。
 全体における地域別の割合は、関東が前回に比べ6・5ポイント増の17・3%、中部が3・4ポイント増の8・2%、近畿が3・3ポイント増の20・3%。半分を占めた九州・沖縄は9・5ポイント減の41・4%だった。
 計算してみると、関東は18万7千人で前回より5万7千人増、中部は8万9千人(同3万1千人増)、近畿は22万人(同1万5千人増)で、九州・沖縄は44万7千人(同16万2千人減)になる。
 研究代表者の山口一成・国立感染症研究所客員研究員は、感染地域が拡大した理由を「交通の発達などによる人口の流動がある」と説明。「これまで感染者が九州などに一部地域に集中していて、全国的な対策が遅れた」と話す。
 感染経路は母子感染が多く、感染者の母親から母乳などで子供に感染する割合は約20%とされる。このため、抗体検査で感染が判明した妊婦は母乳を中止する予防措置が必要になる。
 しかし、抗体検査の実施は一部自治体に限られ、全国的に広がっていない。厚労省は「前回調査の際、学識者から『各地方で対策を取るべき』とする見解が示されたため全国的な対応が遅れたようだ。今後は感染症認知の徹底など態勢を整えたい」と説明している。
患者団体は公的なバックアップを求めており、闘病中の浅野さんも自身のホームページで「一般の関心も知識も低い病気ですが、紹介されることで病気の予防策が進めば」と書く。
 研究班は今後、全国的な発症者の把握を行うとともに、感染予防ガイドラインを作成。検査の普及などを国に提案する方針という。
 ■成人T細胞白血病 同名のウイルスが原因で発症する白血病。ウイルスが血液内の白血球(リンパ球)に感染すると、異常を起こした細胞の増殖が止まらなくなり、抵抗力が落ちてさまざまな合併症を併発する。治療は無菌室などで慎重に進められ、抗がん剤治療や骨髄移植などが行われるが、薬への耐性が強いため再発しやすいとされる。現在、白血病で死亡する人は国内で年間6千人以上とされるが、うち2割近くをこの病気が占める。


11.新型インフルエンザワクチンで薬害を起こさないために
日経メディカル2009年8月23日

上昌広(東京大学医科学研究所先端医療社会コミュニケーションシステム社会連携研究部門准教授)
※今回の記事は村上龍氏が編集長を務めるJMM (Japan Mail Media)8月12日発行の記事(「第37回 新型インフルエンザワクチンで薬害を起こさないために」)をMRIC用に改訂し転載させていただきました。
 新型インフルエンザに関する報道はめっきりと減りましたが、患者数は夏の間も増え続けています。8月4日、世界保健機構(WHO)は全世界の死亡者数は1,154人に上ると発表しました。この中で、まだ死者が出ていない日本は驚異的ですが、日本で死亡者が出るのは時間の問題でしょう。
 ちなみに、季節性インフルエンザでも毎年約1万人が死亡していますし、過去の経験から、2~3年もすれば、新型インフルエンザはそのまま季節性インフルエンザとなって流行を繰り返すと言われています。もっと、長期的視点に立って、新型インフルエンザ対策を考えたいものです。今回は、新型インフルエンザワクチンが抱える問題について、ご紹介したいと思います。
【エビデンスのない新型インフルエンザワクチン】
 厚労省は、秋から冬にかけての流行に備えて、新型インフルエンザワクチンの購入を検討しています。このような報道を見て、皆さんは、「ワクチンは接種するのが当然だ。接種すれば感染を防げる」とお考えではないでしょうか。
 意外かもしれませんが、季節性インフルエンザワクチンには、あまり予防効果はありません。重症化を防ぐ可能性があると言われていますが、それも100%ではありません。その効果は、ワクチンの型が合っていない場合10~30%、型が合っていても40~80%程度です。
 実は、厚労省が季節性インフルエンザワクチンの有効性を認めて、予防接種法に位置づけているのは、65歳以上と基礎疾患のある人だけです。裏返せば、厚労省は、それ以外の人々には定期接種するほどの安全性・有効性は明らかではないと考えていることになります。
 では、新型インフルエンザワクチンの効果はどうでしょうか。新型インフルエンザワクチンも、季節性インフルエンザワクチンと同程度の効果と推測されていますが、世界中で初めて使うのですから、どの国もどの製薬企業も、十分なデータを持っていません。既に治験を始めている国もありますが、治験では、少数の患者を対象に、短期間しか観察できませんから、長期的な有効性や稀な副作用に関して十分な情報を集めることが出来ません。つまり、新型インフルエンザワクチンに関しては、有効性も安全性も、よくわからないまま使おうとしていることになります。
【副作用は避けられない】
 このように考えると、我が国では、十分な議論をしないまま、エビデンスのないワクチンが多数の国民に接種されようとしていることになります。仮に、副作用の頻度が0.01%~0.001%程度であったとしても、数千万人にワクチンを接種すれば、数百人~数千人に副作用が起こり、重大な社会問題を引き起こします。
 もし、新型インフルエンザの致死率が高く、ワクチンによる救命が期待できるなら、接種は合理的です。しかしながら、現時点で有効性・副作用に関する情報は限られています。誰もワクチンのリスクとベネフィットを天秤にかけることが出来ません。
 このような状況の中、WHOは、ワクチンを大規模に接種すれば、副作用は避けられないと明言しています。さらに、各国が少数のデータで迅速承認するのであれば、安全性への配慮を忘れてはならないと警告しています。これは、WHO内にいる公衆衛生の専門家たちの発信ですが、専門家としての誠意を感じます。
 ところが厚労省は、ワクチンの安全性について、国民に一切説明していません。あたかも、「すべてのワクチンには必ず副作用リスクがある」という当たり前のことを「隠して」いるように見えます。この点は、WHOの専門家とは対照的で、厚労省内で新型インフルエンザ対策を企画・立案する医系技官は、医師として大きな問題があると言わざるを得ません。
日本の過去のワクチンに関する経験】
 日本では、ワクチンの薬害訴訟が繰り返されてきました。例えば、種痘・インフルエンザ・三種混合(DPT)・新三種混合(MMR)などが挙げられます。
 このような訴訟のたびに、厚労省や自治体は予防接種を中止し、自らの責任を回避してきました。この結果、リスクとベネフィットのバランスについて、十分に議論されることはありませんでした。
 ワクチン接種を中止すれば、ワクチンの副作用はなくなりますが、副作用が発生する人数よりもずっと多くの人が、ワクチンで回避可能な感染症に罹ってしまいます。皆さん、日本が麻疹や結核の罹患率が先進国で最高で、海外から「伝染病輸出国」と非難されているのはご存じでしょうか。これは、薬害事件の際に、十分な議論を怠ってきたツケです。
【米国の過去のワクチン薬害】
 ワクチンによる薬害は、何も我が国だけが困っている訳ではありません。米国も、同様の苦い経験があります。
 1976年、ニュージャージーでH1N1型の新型インフルエンザAが流行しました。この事態を憂慮した米国政府は、早急にワクチンを開発し、4000万人以上に接種しましたが、ギラン・バレー症候群という神経系の副作用(先日、亡くなった大原麗子さんの病気です)が多発し、ワクチン接種は中止されました。この件は様々なメディアで報道され、当時のニクソン大統領は議会で責任追及、CDC長官は更迭されました。
 この事件に関しては、後日、多くの研究者が検証し、さまざまな問題点が明らかになっています。例えば、ギラン・バレー症候群の発生率は100万人あたり、ワクチン接種していない集団で0.97人、ワクチン接種した成人の集団で4.9~11.7人でした。この事実は、新しく開発された新型インフルエンザワクチンが、「危険」であることを意味しています。
【米国は過去に学んで無過失補償制度を整備】
 この事件をきっかけに、米国ではワクチン副作用に関する国民的議論が巻き起こりました。その結果、米国では1988年に、National Vaccine Injury Compensation Program (VICP)が設立され、ワクチンによる副作用が発生した人は、十分な補償を受けることができるようになりました。従来、副作用が起きた人は、訴訟を起こして賠償金を請求する以外に、救済を求める方法はなかったのですが、VICP設立によって、国・ワクチンメーカー・医療関係者など、誰かの責任追及をせずとも、補償を受ける道が開かれたのです(無過失補償制度)。これによって、無過失補償を受けるか、あるいは無過失補償を拒否して訴訟を起こすか、米国民は選択できるようになりました。
 VICPが支払う補償の財源は、ワクチン一本に75セント上乗せされた税金で賄っています。つまり、誰に起こるかわからない副作用リスクに対して、ワクチン接種を受ける人々が保険をかけているようなものです。
【弥縫策に終始した厚労省】
 米国の経験は、副作用と薬害は区別して考えるべきことを示しています。副作用はなくなりませんが、薬害は社会的な議論を通じて克服できるかもしれません。
 一方、日本の薬害対策は弥縫策に終始しています。厚労省は、薬害事件が起こるたびに、ワクチンを定期接種の対象から除外したり、定期接種といえども任意(自己責任)で接種するように、予防接種法改正してきました。この結果、予防接種は国家賠償訴訟の対象からはずれ、賠償責任は医療現場や製薬企業に押しつけられました。これでは、厚労省が責任回避したと言われても仕方ありません。
 私は、厚労省こそが訴えられるべきだと主張している訳ではありません。問題は、ワクチン被害の救済の機会が平等でないことです。現行制度では、訴訟した人だけが補償金を受け取り、訴訟しなかった人は泣き寝入りです。新型インフルエンザワクチンが、国民的な関心を呼んでいる今こそ、国民が納得できる救済方法はどうあるべきか、建設的な議論をすべきではないでしょうか。このままでは、新型インフルエンザワクチンでも、薬害を繰り返しそうです。
【新型インフルエンザワクチンと予防接種法】
 これまでの配信で、新型インフルエンザ騒動では、厚労省の不適切な対応が医療現場を混乱に陥れたことを紹介してきました。実は、インフルエンザワクチンでも混乱が生じそうです。
 問題は、新型インフルエンザワクチンが予防接種法に位置づけられていないことです。このままでは、新型インフルエンザワクチンは定期接種の対象とはならず、国が予算措置したとしても、副作用の補償は、国の被害救済制度ではなく、製薬企業の拠出金で賄われることになります。両者では雲泥の差です。
 この問題は製薬企業にとっても深刻です。新型インフルエンザワクチンを販売する外資系製薬企業は、無過失保障制度が整備されていない国とは契約したくはありません。副作用が出た場合、自らが訴訟のリスクを負いかねないからです。
 あまり、マスメディアでは報道されませんが、ワクチンの副作用対策について、多くの先進国は責任追及と被害救済を分けて議論しています。ワクチン製造や承認関わった製薬企業や審査当局は、所定のプロセスを踏んでいれば免責されます。つまり、訴えられません。一方、被害者の救済は、国家が責任をもって対応しようとしています。残念ながら、我が国では何れも不十分です。免責制度はありませんし、無過失補償制度が整備されているのは、出産だけです。
 本来、新型インフルエンザワクチンは、公衆衛生上の目的で、国策として接種するのですから、きちんと予防接種法に位置づけるべきです。先進諸国は、新型インフルエンザを公衆衛生上の危機と位置づけ、国策として取り組んでいます。現在、新型インフルエンザワクチンの供給は不足し、完全な売り手市場です。この状況では、我が国は十分量のワクチンを入手できないかもしれません。
 余談ですが、民主党の足立信也参議院議員は、この問題に熱心に取り組んでいます。先月、民主党が発表したINDEX2009 医療政策の中には「無過失補償制度の創設」という項目が設けられ、「産科のみならず、すべての診療科」で公的無過失保障制度を整備すると明言しています。補償の原資は、保険料、公的保険料、公的支出とし、制度運営のための基金を設立するとしています。時宜を得た政策だと評価します。
【もっと大人の対応を!】
 新型インフルエンザワクチンの導入にあたって、リスクとベネフィットをどのように考えるか、国民的な議論が必須です。
 ところが、マスメディアはこの問題を全く報道していません。このため、多くの国民は十分な判断材料を持ち合わせません。これまでのメディア報道を見る限り、多くの国民は新型インフルエンザワクチンを有効と信じ、十分量のワクチンが確保出来れば、「国民皆接種」すべきだと考えているように見うけます。
 しかしながら、一旦、副作用が報道されたら、世論は一変するでしょう。きっと、ワクチンの問題点を挙げ、製薬企業や厚労省を糾弾すると思います。これでは、いつか来た道です。羮に懲りて膾を吹く。我が国は、必要以上にワクチンのリスクを強調し、ワクチンの使用を控えるようになるでしょう。これでワクチンラグの完成です。結局、困るのは自分たちですが、自縄自縛となって動けません。そうならないためにも、今まさに、もっと大人の議論をしようではありませんか。


12.新型インフルエンザと輸血の問題をもっと議論しよう―日赤プレスリリースに思うこと―
日経メディカル2009年8月22日

成松宏人(東大医科学研究所先端医療社会コミュニケーションシステム社会連携研究部門客員研究員)
【新型インフルエンザと輸血供給問題?血小板輸血が危ない!】
 今春の新型インフルエンザ騒動は、医療関係者に危機管理について課題を突きつけました。2009年5月、関西地区で献血者数が34%も減少したのです(朝日新聞 2009/5/23)。これは新型インフルエンザの感染拡大により外出を控える人が増え、献血が減ったことが原因でした。特に血小板輸血への影響は深刻です。常温保存のため、4日間しか保存できず、在庫調整が困難だからです。血小板が不足すれば、がん治療や大手術は制限されます。
【病原体不活化技術】
 輸血の病原体不活化は、血液を処理し核酸を壊すことによって、ウイルス・細菌・原虫などの病原体を殺す技術です。多くの専門家は、この技術は、新型インフルエンザ流行時の輸血確保に有用かもしれないと考えています。
 少し、専門的になりますが、ソラレン誘導体を用いた不活化技術をご紹介しましょう。ソラレンはレモン、セロリなどの食品に多く含まれる化合物です。この技術を用いれば、血小板製剤の保存期限は4日から7日に延びます。なぜならば、この方法は保存中の細菌増殖を抑制可能だからです。食べ物にたとえると「真空パック」とか「防腐剤」といったイメージでしょうか。もし、保存期間が延びれば、輸血の充足している地域から、不足している地域に血液をまわすことが容易になります。
 この技術は、世界で急速に普及しつつあります。具体的にはEU16カ国、一部の東南アジア諸国では既に承認されています。また、米国、中国、韓国では承認のための審査中です。
【日赤からのプレスリリース】
 我が国でも、この問題について議論が進みつつあります。ちなみに、筆者もMRICに寄稿させていただきました。
 7月28日、日本赤十字社(日赤)から「血液製剤における安全対策の進捗状況」と題したプレスリリースが発表されました。日赤は、日本の輸血事業を独占している組織で、輸血医療に対する影響力は絶大です。私は、日赤が自らの意見を社会に示したことは評価しますが、このプレスリリースでは、国民に十分な情報を提供しておらず、不十分だと感じます。まず、プレスリリースを引用しましょう。 『新型インフルエンザの感染は世界的に流行しており、わが国においても今秋には更に蔓延することが想定されています。
  日本赤十字社では、新型インフルエンザが蔓延し、多くの人々が感染することによって、献血にご協力いただけなくなることを考慮し、献血による輸血用血液製剤の確保に向けた対策を検討しております。
 病原体低減化(不活化)技術(以下、「病原体低減化技術」という。)の導入により、血小板製剤の有効期間が現行の4日間を2日程度延長できるため、新型インフルエンザ対策としても有効との意見もありますが、元々在庫量が極めて少ない状況では有効期間延長の効果は少なく、在庫の絶対量を確保することが最優先の対策です。
 したがって、新型インフルエンザ蔓延時の対応と血小板製剤の病原体低減化技術導入による有効期間延長の問題は、別々に検討すべき課題です。(後略)』
不活化技術導入と血液製剤の絶対量の確保は二者択一か?】
 筆者は、不活化技術の導入だけで、すべての問題が解決できるとは思っていません。しかしながら、この方法は、血小板供給対策として有望であり、早急に議論すべきです。その際には、安全性やコストについて十分な検討が必要なことは言うまでもありません。しかしながら、今回のプレスリリースは、「このような議論を行なうつもりはありません」と宣言しているようなものです。これは論外です。
 新型インフルエンザ流行時の対応は不活化技術だけではありません。不活化技術のそれらの中での位置づけを議論するためにも、どの様な対応があるか総合的に考えてみたいと思います。これは、大きく分けて
1) 輸血の絶対量の確保
2) 在庫調整による有効活用
があります。1)はなんと言っても献血者の確保です。2)には不活化技術の導入が有効な可能性があります。
【日赤が血液事業を独占する意味】
 具体的な議論をする前に、日赤が日本の血液事業を独占している意味を考えてみましょう。
 一般論として、経済活動は、複数の企業が参入し競争した方が価格も下がり、供給も安定します。これは「市場原理」です。しかしながら、一部の分野では、このような供給方法をとらず、国家が独占を認めています。
 代表例として電力供給があります。多くの国民は、電力供給は社会にとって必要不可欠で、市場に依存すれば安定供給できなくなるリスクがあると考えています。例えば、電気需要は季節毎に使用量が大きく変動し、真夏のピーク時に合わせて発電能力を維持するためには、多くの無駄を覚悟しなければなりません。この無駄を省く「合理化」に失敗して停電になれば、困るのは国民です。このような事態を避けるため、独占を許すことで、供給を安定化させています。
 輸血供給も、国民の生命に直結する社会インフラです。国民が日赤の独占を許しているのは、社会情勢に振り回されず、血液製剤の供給を維持できるよう願っているからです。地震などの大災害では、多くの国民が怪我をして輸血が必要になります。
 独占を認められた日赤は、市場の洗礼を受けない代わりに、高い公共心が求められることは言うまでもありません。なんと言っても、ボランティアから採取した献血を使って、「商売」しているのですから。
 今回の新型インフルエンザ騒動では、国民に正確な情報を提供し、広く議論することは日赤に課された使命とも言えます。
【絶対量の確保?海外から不活化製剤を輸入するというシナリオも】
 話を戻して、輸血の絶対量の確保について議論しましょう。
 まず、現在の血小板の供給状況をご紹介しましょう。正確な数字は公表されていないものの、血小板輸血は製造された製剤の90~95%が使用されているといわれています。そして、残りの5-10%は使用されずに廃棄されていると推定されます。このうちの一部が余剰在庫になって、献血者が減少した場合でもカバーすると考えられます。
 今年春の関西でのインフルエンザ流行時には献血者数が減少したにもかかわらず、実害は出ませんでした。これは、献血者の減少が限られた地域に限定され、献血者減少の程度が小さかったために、余剰在庫でまかなうことができたからだと考えられます。この余剰在庫を増やす、もしくは危機下でも維持するのが絶対量の確保です。
 では、本格的な流行時には、この5-10%の余剰在庫だけで大丈夫なのでしょうか?筆者はとてもこれだけの在庫では安心することはできません。今年春の際にも震災の経験があり、危機管理ノウハウを蓄積している神戸だから、上手くいったのかもしれません。
 一方で、日赤は在庫の絶対量の確保のみで対応すると表明しています。たとえば、新型インフルエンザ大流行時にも血小板必要量を十分にまかなえるような数のドナーのリストを日赤が持っていて、不足時にはいつでも成分献血に応じてもらえるとの確約をもらっているというならば、筆者も安心できます。日赤はどの程度のドナープールをもっているか、その絶対量を国民に説明する必要があります。
 ちなみに、今年春の関西でのインフルエンザ流行時には医療機関に輸血用血液の節約を求める厚労省通知が出されました(平成21年5月21日発、薬食血発第0521001号、第0521002号)。もし、日赤がドナープールに自信があるなら、こんな通知は不要な筈です。明らかに自己矛盾しています。
 筆者はこの血小板輸血を「節約」する方法は、ほとんど効果がないと思います。血小板製剤は貴重です。例えば濃厚血小板10単位一本の薬価は約7万5千円と高価であるのに加えて余剰在庫もほとんどないことから、通常時でも必要最低限しか使用していません。これ以上節約する余地はほとんどないでしょう。
次に考えられるのは献血者制限の緩和による絶対量確保です。7月29日の朝日新聞には新型インフルエンザの流行に備えて日赤がBSE対策関連として行っている英国滞在者の献血制限を一部緩和する方針を固めたことが報道されました。また、ドイツのPEI(生物製剤の規制当局)は各地の血液センターに対し、新型インフルエンザ流行地域への旅行歴があるドナーからの献血の際には、病原体不活化が必要との指示を出しました。今秋の新型インフルエンザ再流行を控え、欧州諸国も対策に余念がないようです。
 余談ですが、このような対策をとっても献血の絶対量が不足する場合は、海外からの血液製剤の輸入も考えなければいけないでしょう。しかし、筆者の知る限りでは、この点に関しての具体的な議論が十分になされた様子はありません。
【在庫調整による有効活用】
 在庫調整に有効と考えられているのが不活化技術です。たとえば、都市部で午後に献血された場合、すぐに肝炎やエイズに対する検査(NAT)が行われ、翌日には結果が判明します。血小板の有効期限は4日ですから、残りの3日間で各施設へ送付され、実際の患者さんに投与されます。地方では2日になることもあります。このように、時間がタイトなため、他の地域に製剤をまわすという余裕はありません。
 一方、不活化技術を導入すれば、有効期限は4日から7日に延びます。この結果、NAT検査が終了してからの時間的余裕が3日から6日に延びます。
 今春の関西における日赤の対応は大変示唆に富みます。プレスリリースには、献血者数が減少した際に最悪の事態を想定して、赤血球輸血に関しては全国から関西地区に赤血球製剤を送るという、まさしく在庫調整を行ったことが記されています。非常事態の際には在庫調整が必要であることを、日赤自身が示したのです。ただし、これは赤血球製剤の保存期限が21日と長いために可能でした。
【不活化技術の副作用と日赤・輸血専門家の態度】
 不活化技術の最大の懸念は、輸血製剤に添加物を加えることによる副作用です。実は、この件に関し世界的なコンセンサスはなく、各国に温度差があります。例えば、欧州は安全と判断し承認済みです。一方、米国では審査員の間で意見が割れ、承認の最終段階です。余談ですが、米国政府は、新型インフルエンザが社会問題化すると速やかに、輸血確保と医薬品・医療機器の迅速承認を明言しました。私は、米国政府は不活化技術を念頭においていると考えています。
 日本で、不活化承認に大きな影響力を持つのは、日赤と厚労省審議会の専門家たちです。彼らは副作用を非常に懸念しています。もし、副作用が社会問題化した場合、責任を問われるのは自らだと考え、その導入に強く抵抗しています。実は、この態度は、「責任回避」という側面から考えた場合、合理的です。薬害が生じた場合の過失に対する糾弾と比べれば、ドラッグやデバイスのラグにおける不作為への糾弾など大したことはないからです。さらに、我が国の医療行政では、「権限」と「責任」の所在が不明瞭なため、日赤や審議会の委員たちは、他者に責任転嫁するでしょう。
 もし、新型インフルエンザ問題が勃発しなければ、米国の判断を待って、「じっくり」と対応すれば良かったのですが、状況は変わってしまいました。不確実な状況の中で判断することが求められています。
【欧州では副作用の報告は少ない】
 では、不活化技術が導入されている欧州では、副作用は起きているのでしょうか。欧州からの報告によれば、約16,000例に不活化された輸血が行われ、副作用発生率は0.66%です。いずれも血小板輸血に見られる軽症アレルギー反応であり、重篤な副作用は報告されていません。また、この頻度は、不活化しない従来の血小板輸血でみられる副作用(3~4%)よりかなり低い頻度です。これを見る限り、短期的には安全性は高く、血小板輸血に多い副作用対策への提言にもなっています。
 勿論、日本人に不活化技術を導入した際に、いままで海外では指摘されていなかったような、晩発的な副作用が出ることは否定できません。この点は、国民がリスクとベネフィットを総合的に評価して、判断を下すしかありません。
【本当のステークホルダーは誰か?】
 さて、プレスリリースに戻りましょう。後半には以下のように記載してあります。 『日本赤十字社では、安全対策としてこれまでに検討してきた血小板や血漿の病原体低減化技術について、低減能、品質への影響、事業への適合性などの評価結果を薬事・食品衛生審議会に報告してきました。
 血小板製剤における病原体低減化技術は、ビタミンB2を添加して紫外線照射する方法を重点に、処理した血小板の機能や細菌低減能を評価し、同審議会で審議していただいています。本年中には当面導入すべき技術についての最終的な審議をいただけるよう、現在準備を進めているところです』
日赤によれば、不活化技術の導入の是非は「審議会」で決めるとのことです。筆者は、この部分に問題が凝縮されていると考えます。無責任体制です。
 不活化技術を認めないという判断では上述のインフルエンザ流行時にも在庫調整は、ほぼ不可能でしょう。最悪の場合は、患者さんが輸血不足で亡くなるかもしれません。一方でこれを認めると、未知の副作用が起こるかもしれません。こんな重い判断、「審議会」の委員や日赤、厚労省の担当者だけで果たしてできるのでしょうか?
 筆者はこの問題について判断ができるのは、当事者だけだと考えます。言い換えれば、判断の結果の影響を受けるステークホルダー(利害関係者)、つまり、「結果責任」をとる人たちです。
 では、この問題のステークホルダーは誰でしょうか?まず、第一に輸血療法を必要としている患者、次に将来患者になる可能性のある国民、そして、患者の利益の最大化を職業的使命としている医療関係者です。
【机上の空論に終始した審議会】
 7月28日に「審議会」で「新型インフルエンザの蔓延時等における献血量の確保について」話し合いがあったようです。その資料が公開されています。危機管理対策としての不活化導入の議論は全くされませんでした。
 代わりに、
1)官公庁・企業等における事業所献血の推進
2)複数回献血者への緊急的な呼びかけ
3)医療機関における適正使用の更なる推進
4)海外滞在歴による献血制限の緩和
などが対策として提示されています。
 1)2)ではシミュレーションが試みられていますが、官公庁の職員や献血に熱心な人が、インフルエンザが猛威をふるっているまっただ中で果たして想定通りに献血してくれるのでしょうか。3)の適正使用推進でのシミュレーションでは赤血球輸血のみが取り上げられており、需給が逼迫する血小板は全く想定されていません。血小板に関しては在庫調整なしで乗り切る方針のようですが、この対策だけで危機管理として十分かどうか、少なくとも筆者はとても心配です。
【さらなる情報開示と議論を】
 この問題は、審議会を隠れ蓑に使う日赤と厚労省に任せていては、全く解決しそうにありません。この問題を解決するには、徹底的な情報開示、合意形成のための「本当の」ステークホルダーによる徹底的な議論が急務です。
 まず、情報開示です。プレスリリースがなされたことは第一歩としては評価されるべきだと思います。ただ、残念ながら不十分です。まず、新型インフルエンザ対策としての不活化技術の導入について日赤が頑なに議論すら拒んでいる理由が不明です。絶対量の確保だけで乗り切れるというならば、みなが納得いく根拠を速やかに開示すべきです。また、春に起こった関西での新型インフルエンザ流行は秋以降の大流行に備える上で貴重な「経験」になっているはずです。このとき行った対策の評価を含めた詳細なデータの公表が必要です。
 次に議論です。今回の総選挙に向けた民主党のホームページの政策INDEX2009に不活化技術の導入が明記されています。選挙の結果次第では、日赤・審議会は与党と真っ向から対立することになります。
【不活化技術導入のコストは200億、国民の命の値段として高いのか?】
 不活化技術導入にはおおよそ200億円のコストがかかると言われています。ちなみに何かと話題に上る「アニメの殿堂」(国立メディア芸術総合センター)は土地・建物だけで117億円です。税金の使い道は国民が決めることです。コストは、不活化技術導入の言い訳にはなりません。
 社会は多様化、グローバル化しました。これからも一部の専門家や担当者では、とても判断できない問題は増え続けるでしょう。この不活化技術の導入問題は今後の日本医療の行く末を占う試金石になると考えています。そして、この問題を解決するのは最終的には「本当の」ステークホルダーである患者、国民、現場の医療関係者でしかあり得ません。


13.新型インフルエンザA(H1N1)の流行状況-更新12
IDSC2009年8月22日

国内の状況
 本邦においては、5月からの各地方自治体における積極的な対策により、新型インフルエンザ(H1N1)2009の感染伝播が低く抑えられていたが、インフルエンザのもつ本来の感染性と多数の軽症者、無症候性感染者の影響もあり、地域への浸透は継続しており、ここにきて、徐々に増加しつつある。
 国内においては、7月24日時点で、4,986例の確定例(死亡例はゼロ)が報告され、国内においても地域内感染伝播が持続していると考えられたため、この日を持って疑い例の全数検査は中止となっている。集団発生からの疑い例と確定例の報告、および入院例の報告は継続されているものの、現状では、全国約4,800の定点医療機関からのインフルエンザと診断された患者の報告数と、それらから提出された検体からのウイルスサーベイランスにより、流行状況は十分把握できるレベルになっている。
 感染症発生動向調査によるインフルエンザの報告状況をみると、第28週頃より急激に増加している。最新のデータである、第32週1週間におけるインフルエンザの報告数は、4,630例で、これは統計学的な推計によると、この1週間に全国で約60,000例(95%信頼区間40,000-80,000)の患者が発生していると推定される。また、定点あたり報告数(1週間の1医療機関当たりへの受診患者数)に直すと、0.99であり、通常の冬季の季節性インフルエンザの全国的な流行の指標とされている1.0に近くなっている。ただ、まだまだ地域的には流行状況に大きな差異があり、都道府県別の定点あたり報告数では沖縄県(20.36)、奈良県(1.85)、大阪府(1.80)、東京都(1.68)、長崎県(1.50)、長野県(1.44)、三重県(0.99)、茨城県(0.91)、兵庫県(0.91)の順となっている。報告されている流行ウイルスは、ほとんどが新型インフルエンザウイルスAH1pdmである。
 8月11日現在の厚生労働省へ報告された新型インフルエンザ(H1N1)による入院患者数は、119例であり、8月19日までに沖縄県、兵庫県、愛知県で3例の死亡が報告されている。
 今後地域での流行状況の推移に留意していく必要がある。
世界の状況
 世界的にも、すでに患者数の全数報告は中止となり、新たに感染が確認された国を除いては、定期的な報告は流行状況とリスクに関する指標のみとされているため、数字にはあまり意味はないが、8月6日時点では、世界で170以上の国/地域から、177,457例の患者と1,462例の死亡が報告されている。
 南半球の温帯地域の国々では、ほとんどの国で初冬に急速な患者の増加があり、冬季が終わりに近づきつつある現在、減少傾向を見せつつあるが、依然としてウイルスの伝播は続いており、早期には感染があまりみられなかった地域での流行に移り変わりつつある。これらの地域におけるインパクトはまだ評価中であるが、ほとんどの国では、人工呼吸管理を必要とする入院患者が増加し、通常の季節性インフルエンザよりも若干強いと報告されている。


14.Pandemic (H1N1) 2009 - update 62
WHO2009年8月22日

Laboratory-confirmed cases of pandemic (H1N1) 2009 as officially reported to WHO by States Parties to the IHR (2005) as of 13 August 2009
The countries and overseas territories/communities that have newly reported their first pandemic (H1N1) 2009 confirmed case(s) since the last web update (No. 61) as of 13 August 2009 are:
Ghana, Zambia, and Tuvalu
Map of affected countries and deaths as of 13 August 2009 [png 313kb]
Region Cumulative total
as of 13 Aug 2009
Cases* Deaths
WHO Regional Office for Africa (AFRO) 1469 3
WHO Regional Office for the Americas (AMRO) 105882 1579
WHO Regional Office for the Eastern Mediterranean (EMRO) 2532 8
WHO Regional Office for Europe (EURO) Over 32000 53
WHO Regional Office for South-East Asia (SEARO) 13172 106
WHO Regional Office for the Western Pacific (WPRO) 27111 50
Total Over 182166 1799
*Given that countries are no longer required to test and report individual cases, the number of cases reported actually understates the real number of cases.


15.医薬品情報:【新薬】モメタゾンフランカルボン酸エステル
日経メディカル2009年8月21日

アズマネックス:新デバイスを採用した吸入ステロイド薬
2009年7月7日、吸入ステロイド喘息治療薬のモメタゾンフランカルボン酸エステル(商品名:アズマネックスツイストヘラー100μg60吸入)が製造承認を取得した。適応は「気管支喘息」であり、通常、1日2回吸入する。モメタゾンフランカルボン酸エステル製剤は、日本では既に、2008年に発売された点鼻液(商品名:ナゾネックス)と、1993年に発売された外用剤(商品名:フルメタほか)が使用されている。
 気管支喘息の治療・管理では、気道炎症と気流制限を惹起する因子を回避・除去し、薬物療法により気道過敏性と気流制限を軽減・寛解することが目標となる。具体的な長期管理薬として「アレルギー疾患診断・治療ガイドライン2007」では、吸入ステロイド薬が第1選択薬に位置付けられている。
 現在、吸入ステロイド薬は、加圧式定量噴霧吸入器(pMDI)もしくはドライパウダー吸入器(DPI)の形で、フルチカゾンプロピオン酸エステル(商品名:フルタイド)など、4成分が臨床使用されている。これらの吸入ステロイド製剤の普及で、気管支喘息の長期管理が容易になっている。
 今回、承認されたのは、吸入時の平均粒子径が2μmとなるモメタゾンフランカルボン酸エステルのドライパウダー製剤であり、肺への送達率が約40%と高いのが特徴である。臨床試験では、投与開始1週目から、起床時のピークフローを有意に改善したとの報告がある。さらに、グルココルチコイド受容体への親和性が高いこと、吸入時の血中移行性(全身吸収性)が低いことも特徴である。
 また、デバイスには、吸気速度の低下した患者でも安定した吸入が可能となる「ツイストヘラー」が採用されている。ツイストヘラーは、キャップ開閉操作のみで1回吸入量が装填されるため使用方法が簡便で、残量不足状態での誤使用を防ぐために、規定回数吸入後に操作不能となるロックアウト機能も装備している。ただし、操作方法が従来の吸入薬とは異なるので、投薬時には、患者に使用説明書を渡し、十分に使用法を指導することが必要であろう。
 モメタゾンフランカルボン酸エステルは、喘息を適応とする吸入製剤としては2009年1月現在、欧米をはじめとする世界60カ国で承認されている。承認時までの臨床試験では、副作用が19.8%に認められており、主なものは、口腔カンジダ症(6.0%)、嗄声(5.7%)、咽喉頭症状(不快感、疼痛、乾燥、刺激感)(2.5%)などである。また海外では、重大な副作用として、アナフィラキシー様症状が報告されている。


16.Swine Flu Vaccine Seems Safe in Early Trials
No worrisome side effects so far, U.S. officials say; flu infections continue to be mild
HealthDay News2009年8月22日

As the H1N1 swine flu virus continues to circle the globe, producing minor infections similar to seasonal flu, U.S. health officials said Friday that they were on track for a viable vaccine by the fall, with early indications that the shot is safe.
The new vaccine is now in a series of clinical trials, the results of which should be completed between mid-September and late October. Officials said they hope to have 45 million to 50 million doses by mid-October and 195 million doses by year's end.
"A number of clinical trials were designed and have begun to ask fundamental questions that would inform how we would use the virus, the proper dose, some early safety data as well as the use of the vaccine in certain populations," Dr. Anthony Fauci, director of the U.S. National Institute of Allergy and Infectious Diseases, said during an afternoon press conference.
There are five trials, Fauci said. One trial, which started in early August, is designed to determine the most effective dose of the vaccine and whether one or two doses will be needed. "We expect first-dose data in mid-September and second-doses data in mid-October," he said.
Early results for this first trial among adults have found the vaccine to be safe with no serious side effects, he added.
Another trial, also involving adults, is looking to determine the best timing for giving the vaccine for seasonal flu as well as the new H1N1 swine virus vaccine. A third trial that began a few days ago is testing the vaccine in children 6 months to 17 years old, Fauci said. Dosing information from this trial is expected in September and October, he said.
Trials are also planned involving pregnant women; they are scheduled to start in mid-September.
Finally, there will be a trial testing so-called adjuvants, which are additions to the vaccine to make it more effective. This trial is set to launch in mid- to late September, Fauci said.
The U.S. Centers for Disease Control and Prevention is making plans to distribute the swine flu vaccine when it becomes available. The agency has also issued its final recommendations for groups of people who should be vaccinated, Dr. Jay Butler, director of the agency's H1N1 Vaccine Task Force, said at the press conference.
These groups include "pregnant women, children and young adults aged 6 months to 24 years, as well as persons aged 25 to 64 who have medical conditions that put them at high risk for influenza-related complications," Butler said.
Health-care workers and people who live with or care for infants under 6 months of age, who are too young to be vaccinated, should also be vaccinated, he said.
While the H1N1 swine flu is expected to return to North America in the fall, right now flu activity in the United States is low, and it appears to be winding down in the Southern Hemisphere, where winter is coming to a close, Butler said.
"To date there have been 7,963 hospitalizations and 522 deaths [in the United States] that have been laboratory confirmed as caused by novel H1N1 flu," Butler said. "It is important to keep in mind that these numbers radically underestimate the number of cases that actually occur, because many cases go without testing," he added.
Most states are reporting low levels of swine flu activity, Butler said. The exceptions are Alaska and Maine, he said.
Earlier this week, federal officials announced that there will only be an estimated 45 million doses of vaccine on hand by Oct. 15, rather than the originally anticipated 120 million doses. After mid-October, 20 million more doses of the vaccine will be shipped each week.
Officials attributed the delay to a less-than-expected yield of the vaccine substrate used to make the vaccine; egg cultures are the source of vaccine substrate.
Another factor contributing to the delay is not having enough manufacturers to actually package the vaccine, according to published reports.
In June, the World Health Organization declared the H1N1 swine flu a pandemic, the first such declaration in 41 years. The declaration was made not because the swine flu is particularly dangerous, but because it had become so widespread. To date, there have been 182,166 cases of infection worldwide and 1,799 deaths, the WHO Web site reported Friday.
In a potential worrisome development, Chilean officials on Friday announced the detection of the H1N1 strain in turkeys in that country, the Associated Press reported. Illness in the birds has been mild, but experts have worried that a more transmissible and virulent strain of human flu could emerge if H1N1 combines with an avian strain.


http://fcm-news.blog.so-net.ne.jp/2009-08-23

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