美容の極み

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Oct 05, 2009
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1.医学部定員増に悲鳴 教育水準低下の懸念 東北
2.新型インフル 発熱患者「分ける」85%
3.鳥インフルワクチン、6割の幼児が接種後発熱 臨床試験
4.新型インフルエンザ:子の重症化防ぐ 入院の過半数は10歳未満、持病ないケース多く
5.新型インフルエンザ
6.パンデミックインフルエンザワクチンの現状
7.胃がんの再発7割予測、がんセンターが新システム
8.「生活楽しむ男性」脳卒中などになりにくい
9.どうする「未病」:子どもにしのびよる口腔機能の変化~かむ機能の低下、栄養の偏り
10.手の震え「書痙」治療に道…オン・オフ可能な装置開発へ
11.NECなど、手術器具をICタグで管理 医療事故防止
12.サージカルマスクの性能はN95マスクに劣らない
13.血管手術時のスタチン術前投与で心筋虚血イベントが半減:DECREASEIII試験
14.80歳以上の超高齢者心房細動患者に対する抗凝固療法の出血リスクは許容できるか?
15.学会ダイジェスト:第45回欧州糖尿病学会
1) インスリン アスパルト混合製剤は1日2回から始めた方が有効─IMPROVE Studyから
2) 経口糖尿病薬治療患者へのインスリン アスパルト混合製剤併用はインスリン グラルギンの併用に比べHbA1c値を下げる
16.学会ダイジェスト:第32回日本高血圧学会
1) 糖尿病合併高血圧患者の糖・脂質代謝、腎機能をシルニジピンが改善
2) シルニジピンは心臓の自律神経バランスに好影響を及ぼす
3) 血管平滑筋細胞の老化が血管石灰化を引き起こす
17.プレスリリース
1) シェリング・プラウ、定量噴霧式アレルギー性鼻炎治療剤「ナゾネックス」112噴霧用を発売
2) クレハと田辺三菱製薬、田辺三菱製薬の慢性腎不全用剤「クレメジン」販売権取得に合意
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1.医学部定員増に悲鳴 教育水準低下の懸念 東北
河北新報社2009年10月5日

 医師不足対策として文部科学省が本年度から実施している大
学医学部定員増に対し、受け入れ側の東北の医大・医学部から
不満の声が上がっている。各大学で学生が10人程度増えて少
人数教育に支障が出始めている上、指導教員の手当ては一切な
し。実験機器などが不足する所もある。国は定員増を続ける方
針で、さらに人数が増える来年度以降、十分な医師養成教育が
できなくなる恐れが出てきた。
 各大学の状況は表の通り。1年が110人となった東北大では、1人の教員が5~10人に教えるグループ制の臨床実習などで人数が増えた分、細かいところに目が届きにくくなったという。
 教育担当の柴原茂樹教授は「大教室での講義と違い、実習は詰め込めば何とかなるものではない。少人数を続けようとすればグループ数を増やすほかなく、教員の負担が増す」と言う。
 一気に15人増えた岩手医大は机や顕微鏡、実験台を購入、2000万円を出費した。「医療機器は高価。これ以上、学生を増やすのは限界」(学務部)と悲鳴を上げる。
 各大学が口をそろえる問題が教員不足。教員数は大学の規模によって規定されており、各大学は増員を国に要求したが認められなかった。
 医師である教員は日中、付属病院で診察しながら講義を受け持つ。柴原教授は「研究に打ち込む医師も多く、このままでは疲弊する」と訴える。
 学生は6年学んだ後、臨床研修に臨むが、研修先の病院は教育水準の低下を危ぶむ。東北大病院の加賀谷豊卒後研修センター副センター長は「先進医療が進み、覚えることは多い。大学では一人一人手を取るように教えてほしい。教員不足では、質の悪い医師を増やすだけ」と語る。
 文科省は7月、来年度も定員をさらに370人増やす計画を発表。民主党も政権公約で「医師養成数の1.5倍増」を掲げ、定員増は続くとみられる。教員不足などへの対応について文科省は「新政権が発足したばかりで何も決まっていない」(医学教育課)との立場だ。
 定員増分は、卒業後も地元に残ることを奨励する「都道府県枠」の設定が期待されたが、医師養成には10年近くかかることから東北大は3年次に選択、山形大などは枠を設けないなど対応はさまざま。
 全国医学部長病院長会議の専門委員長を務める嘉山孝正山形大医学部長は「教育環境が整わないのに、今から地域枠を設けるのは無理がある。教員増員など態勢整備が先だ」と話す。


2.新型インフル 発熱患者「分ける」85%
読売新聞社2009年10月5日

妊婦診療の体制整備 急務

 新型インフルエンザの流行が続いている。患者の多くは軽症で治るが、妊婦や、腎臓病や糖尿病などの持病がある人は重症化しやすいとされる。ふだん健康な人が重症化する場合もある。死者も20人(3日午後5時現在)出ている。
 読売新聞は、国や県が指定する感染症指定医療機関と、日本感染症学会の認定研修施設668施設に対し、新型インフルエンザの重症患者の診療体制などについて、8月、アンケートを行った。363施設(回答率54%)から回答があり、一覧表には、最大入院可能患者数が一定以上の施設を掲載した。
 新型インフルエンザについて、〈1〉流行のピーク時に受け入れ可能な最大入院患者数〈2〉人工呼吸器を用いた対応ができる患者数〈3〉腎臓病での人工透析が可能な患者数と、〈4〉周産期(妊娠22週以降の妊婦など)の患者の診療が可能かどうか〈5〉小児の患者の診療が可能かどうかを○×で示した。
 受け入れ可能な入院患者数は平均19人だった。最大は300人で「大流行の場合、市内全体の重症患者を引き受けることになっている」(神奈川・藤沢市民病院)とした。一方、「0人」も8施設あり、「内科医が2年前から不在」「医師数に余裕がなく、日常診療に支障が出る恐れがある」などが理由だった。
 新型インフルエンザは、季節性インフルエンザに比べウイルスによる肺炎が起きやすい。また、入院した子どもの約8割は肺炎などの呼吸器障害が原因との報告もある。人工呼吸器での治療が可能な患者数は、1施設平均で4・6人で、最も多かった施設は30人で、0人も12施設あった。

 入院受け入れ可能数、人工呼吸器の数とも、施設間で大きな差があった。
 人工透析を受ける患者は重症化の危険性があるが、感染症指定医療機関などでの受け入れ可能数は1施設平均2・5人に過ぎず、0人も94施設に上った。このため、日本透析医学会などの対応指針では、「一般の透析施設でも極力透析を続けられるようにする」としている。
 周産期の妊婦を「診療できない」とした施設は37%、また、小児を「診療できない」は18%だった。
 特に妊婦は、国や日本産科婦人科学会が、他の妊婦への感染拡大を防ぐため、かかりつけの産科ではなく一般病院を受診するよう呼びかけており、早急な対応が望まれる。同学会は「一般病院での受診が困難な場合は、かかりつけ産科医が対応する」と、方針を一部改めた。
 一覧表にはないが、一般患者への感染防止のため、入り口などで発熱患者を分けるかどうかも聞いた。85%が「分ける」と答えたが、看板を設置するだけの施設や、入り口で職員が誘導する施設、診察時間を別にする施設など、方法は分かれた。
 今回のアンケートは8月末を回答締め切りに実施した。調査時点では診療体制について「未定」、「検討中」と答えた施設も多かったが、その後の流行状況などに応じて体制に変更がある場合もあるとみられる。厚生労働省も全国の医療機関の状況を調査したうえで、都道府県に対し、医療体制の整備を引き続き求めている。


3.鳥インフルワクチン、6割の幼児が接種後発熱 臨床試験
朝日新聞社2009年10月5日

強毒の鳥インフルエンザの変異による大流行に備えたワクチンの臨床試験で、接種した小児の6割が37.5度以上の熱を出していたことがわかった。入院などが必要になるほど重い副作用につながった子はおらず、ワクチンの効果は9割で確かめられた。
 試験を実施した神谷斉・三重県予防接種センター長らのグループが、米微生物学会の会議で発表した。
 神谷さんは「ワクチン接種後の一時的な発熱は欧米では許容されているが、日本の子どもの保護者は慣れていない。発熱を減らす製法の工夫などが必要だろう」という。
 ワクチンは鳥インフルの患者が目立つアジア地域のウイルス株をもとに、国内2社が製造。海外企業と製法は違うが、小児の臨床試験は例がなく結果が注目されていた。
 臨床試験は、国内2社のワクチンを対象に日本医師会の協力で、生後6カ月~19歳の187人ずつ実施。打つ量は年齢によって異なるが、全員2回ずつ打った。
 1回目に打った後、2歳以下の7割以上、3~6歳の6割強が、37.5度以上の熱を出した。39度台、40度台の高熱の子もいたが、熱性けいれんなどの重症例はなかった。
 1回目の後、頭痛の訴えは2割強。倦怠感や嘔吐も1割前後いた。打った部位に痛みを感じた子は4割ほどで、赤く腫れたのは2割ほど。
 これに対し、鳥インフルへの免疫力をみる指標(抗体)が、打つ前の4倍以上となり、効果があると判断されたのは9割を占めた。
 今回のワクチンには、免疫補助剤が入っている。季節性インフルや、いま政府が打つ準備を進める国内産の新型の豚インフルワクチンには入っていない。免疫補助剤で効果が高まったが、発熱などの反応も強く出たと見られている。ただ、5500人の大人を対象にした臨床試験では発熱は2%。大人と違う理由ははっきりしない。


4.新型インフルエンザ:子の重症化防ぐ 入院の過半数は10歳未満、持病ないケース多く
毎日新聞社2009年10月5日

 ◇異常言動、ひどいせき…脳症、肺炎の恐れ
 国内各地で感染拡大が続く新型インフルエンザ。ほとんどが軽症で済んでいるが、少数ながら重症化した例も報告されている。感染者は20歳未満の若年層に多く、子どものいる家庭では特に注意が必要だ。「かかったかな」と思った時、重症化を防ぐために気をつけたい症状や、受診のタイミングなどをまとめた。
 東京都内のパート従業員の女性(45)は9月中旬、小学5年の長男(10)が新型インフルエンザを発症した。「息子は今年になり季節性のA型、B型、新型と3種類のインフルエンザにかかりましたが、新型が一番、軽かったようです」という。
 長男が新型インフルエンザにかかったのではないかと早めに気付いたのは、親友が感染したと聞き、まめに体温を測っていたからだった。翌日、医療機関にかかりリレンザの投与を受けたところ、1日で熱は下がった。女性は「初めは平熱より少し高い程度だった。友達のことを聞かなければ、周囲に感染を広げていたかもしれない」と話す。
 文部科学省などは感染拡大防止の意味も含め、早期発見、早期治療を呼びかけている。しかし、実際には症状から新型インフルエンザか、普通のかぜかを見分けるのは難しいようだ。
 「林こどもクリニック」=千葉県松戸市=の林龍哉院長(68)は「発熱、鼻水、せき、体がだるい、嘔吐などは、かぜにもインフルエンザにも当てはまる。検査しないと分からないことも多い」と説明する。
 普通のかぜならば、自宅で安静に過ごせば治ることもある。ではどんな状態になったら医療機関にかかるべきか。林院長は「子どもで怖いのは脳症。普段と違う言動があれば、脳症の兆候かもしれないのでただちに受診を」と呼びかける。せきがひどく息苦しそうにしている場合も、肺炎やぜんそく発作の疑いがあるので至急、受診すべきだという。
 これ以外のケースでは、発熱があってもあわてず、まず病院に電話し、受診すべきかどうか、受診の時期などについて相談する。林院長は「新型か、かぜかにかかわらず、元気がない、食欲がないなど普段と違う様子ならば受診したほうがいい。逆に熱が高くても、比較的元気で食事が取れていればあまり心配しなくていい。体温の高さより、子どもの状態をよく観察して」と説明する。
 また、感染しても早い段階では検査で陽性と出ないこともあるという。重症化防止のため、タミフルやリレンザなどインフルエンザ治療薬の早期投与が推奨されており、陰性でも薬を出すべきだとの意見もある。
 これに対し、日ごろから多数の発熱患者をみている林院長は「薬は慎重に投与すべきだ。陰性の患者に投与するのであれば、子どもの状態や周囲に感染者がいるかどうかなどをみたうえで判断するのが現実的ではないか」と話す。
 親としては、解熱剤の飲ませ方にも注意したい。信頼できる医師から処方されたものであれば、高熱で食欲がない、眠れないなどで体力を消耗する場合に有効という。しかし、中には脳症の悪化を招きかねない解熱剤もあるため、手持ちの薬を勝手に使うのは危険だ。
 ◇呼吸、意識、脈拍…症状よく観察を
 厚生労働省はぜんそくなどの持病がある人、妊婦、乳幼児、高齢者に対し、重症化するリスクが高いとして注意を呼びかけている。しかし重症化して入院した人の約半数には持病がない。入院患者の半分以上は10歳未満で、20歳未満が全体の8割を占めている。
 日本小児科学会などによると、重症例で目立つのは、極めて重いウイルス性肺炎や急性脳症、心臓の筋肉にウイルスが感染して炎症を起こし心機能が低下する「心筋炎」などだ。
 新型インフルエンザの肺炎は季節性に比べ、急激に呼吸困難となる場合が多い。その兆候としては、呼吸が速い▽呼吸の頻度が多い▽息を吸うときに胸の一部が陥没する▽顔や唇が青白くなる--などが挙げられる。
 急性脳症は、呼びかけに答えないなどの意識障害▽意味不明の言動▽けいれんが30分以上続いたり、けいれんを繰り返して30分以上、意識が完全回復しない--などの症状に注意が必要だ。
 心筋炎は脈が弱かったり、元気がなく、ぐったりするのが兆候だ。
厚労省はこのほか、嘔吐や下痢が続く▽落ち着きがない、遊ばない▽3日以上、発熱が続く▽病状が長引いて悪化してきた--などの症状に注意を呼びかけている。
 ■感染を防ぐ看病のコツ
 子どもが感染した時、他の家族への感染をできるだけ防ぎながら看病するには、どんな注意が必要か。秋田県は厚労省のマニュアルなどを元に、図解入りで分かりやすい「自宅療養時の手引き」を発行。こまめな換気や看護の後の手洗い、ドアノブの消毒などを呼びかけている。
ホームページは下記URLです。
http://www.pref.akita.lg.jp/www/contents/1242382568143/files/jitaku_ryouyou.pdf
 感染者はマスクを着けて人にうつさないよう注意し、看護者も患者と接する時はなるべくマスクを着ける。ただし、マスクは感染者の飛まつ拡散を防ぐ効果はあるが、健康な人がつけて感染を予防するには限界がある。医療用マスクは正しく着けなければ効果がないとされるが、一般の人には取り扱いが難しい。
 ■ダンスで学ぶ手洗い
 インフルエンザの予防に有効とされる手洗い。日本ユニセフ協会(赤松良子会長)は、正しい手洗いの方法を、小さな子でも楽しく身につけられる「世界手洗いダンス」を考案。世界的ダンサーの森山開次さんの振り付けで、洗い残しの多いつめの間や手首なども、自然によく洗えるよう工夫されている。15日の「世界手洗いの日」に合わせ、ダンスを紹介するポスターの無料配布やホームページ上で動画の配信をしている。
http://handwashing.jp


5.新型インフルエンザ
中日新聞社2009年9月2日~10月5日

うつさない努力重要 大流行に備えて
「新型インフルエンザの感染拡大防止のため、学校祭はここで打ち切ります」
 愛知県内のある県立高校で9月中旬、校内放送が流れた。3日間の学園祭の初日だった。前週から感染者が続いたため、突然の打ち切りに。涙を浮かべる生徒もおり、担当教諭は「させてあげたい気持ちとのせめぎ合い。決定はつらかった」と漏らした。
 今年5月、関西を中心に最初の集団感染が起きた新型インフルエンザ。10月下旬にも「第2波」が訪れると言われてきたが、「次が最初の大流行だ」とみる専門家は多い。その前に少しでも感染拡大を防ごうと、感染者の出た大学や高校では学園祭の中止や延期、一般公開の取りやめが相次ぎ、出ていない学校でも注意を呼び掛けている。
 「恐れすぎず、軽視もしないことが大切」。長年、インフルエンザを研究してきた名古屋市立大の中島捷久名誉教授は強調する。
 季節性と比べて伝播(でんぱ)力が強いのが新型の特徴。感染を完全に防ぐのは難しく、数年のうちにほぼ全国民が感染するとすら言われている。だが、ほとんどの人は発熱が3日続く程度で、約1週間で回復する。国内の致死率は「通常の季節性インフルエンザと同程度」(厚生労働省)といい、特別な“脅威”とは言い切れない。
 ただ、季節性でも年間1万人前後が直接、間接的な原因で死亡していると推計される。厚労省は、新型の発症率を例年の季節性の2倍と想定しており、流行時のピークが高まれば死者数も比例して増えるとみられる。糖尿病などの基礎疾患(持病)を持つ人や、妊婦などは重症化する恐れが大きい。さらに、基礎疾患がない健康な20~50代の死亡例もあり、未知の部分がある点も警戒される。

 定点調査による一医療機関の受診報告数は7月上旬以降、11週連続して増加しているものの、9月20日までの週は4・95。この時期では異常に多いが、季節性でも大流行のピーク時には30~50まで達する。数字上では新型はまだ大流行には至っていない。
 課題は、このまま感染拡大を遅らせ、流行ピーク時のヤマを少しでも低くすること。それが死者数の増加を抑える最大のポイントになる。
 中島名誉教授は「感染した人が他人にうつさないように心がけ、社会全体で流行のピークを抑えることが何より重要」と強調。学園祭などの中止は流行防止に十分有効と指摘する。
 同時に社会的な混乱をどこまで未然に防ぐか。学園祭での注意喚起だけでなく、受験期に移行したら入試の日程調整などで感染者が不利益を被らない対策も講じなければならない。企業でも社員の4割近くが感染した場合など、さまざまな局面で想定が必要だ。
 新型インフルエンザの「大流行」は、秋から冬にかけて確実に訪れるとされる。直前の今、必要な対策や心構えを探った。
弱者守る対策に重点 大流行に備えて

 名古屋医療センター(名古屋市中区)の青木恵津子・感染制御対策室長はがくぜんとした。「これだけ対策を取っても感染するのか」
 新型インフルエンザのウイルスの伝播力の強さは予想を超えた。同センターで8月中旬、新型に感染した女性=当時(81)=が入院6日後に死亡。他の入院患者や医師、看護師ら6人に院内感染したのだ。
 女性が入院した血液内科病棟は、免疫機能が落ちて感染症にかかりやすい患者が多いため、特に注意していた。医師や看護師は常時マスク装着。消毒液の小型容器を離さず、手にかけていた。それでも、院内感染は起きた。
 同センターは感染把握の遅れで院内感染が広がったことを教訓に、積極的に簡易検査するように努めている。だが、青木室長は「最大限の努力はするが、流行時には院内感染を100パーセント防ぐのは難しいだろう」と分析する。
 新型に感染しても、ほとんどの人は軽症のまま回復する。ただ、糖尿病やぜんそくなどの基礎疾患がある人や妊婦が感染すると、重症化して死に至る恐れもある。流行のピークが大きければ、それだけ感染するリスクも高まる。厚生労働省や自治体は、こうした弱者をどうやって守るかに対策の重点を置いている。
 名古屋市では9月に2回、市内の主な病院と医師会、薬剤師会の実務者らによる対策会議を開催。基幹病院に軽症者が集中し、重症者を十分に治療できなくなることを防ぐため、軽症者は地元のかかりつけ医を受診するように呼び掛けていく方針を決めた。
 名古屋医療センターから500メートル西の名城病院では8月、センターに研修に行っている医師が感染し、一緒に食事をした同病院所属の医師にも感染した。院内感染には至らなかったが、ウイルスの伝播力の強さを目の当たりにした。
 同病院には透析患者や心臓疾患を持つ小児、妊婦が多く、感染すれば命にかかわりかねない。病室の入り口など院内各所に消毒液を設置し、外来患者や見舞客らには「発熱があるときには事前に電話し、マスクを着けて来院して」と呼び掛ける。それでも連絡なし、マスクなしで訪れる患者がいるという。
 木本英三副院長は力を込めた。「大流行時に患者が殺到すれば院内感染が起きかねず、重症患者の治療にも力が割けない」
ワクチン効果、限界も 大流行に備えて

 三重県のある病院で9月中旬、新型インフルエンザの国産ワクチンの臨床試験が始まった。医師が慎重に薬液を注射し、被験者に抗体ができるかどうか、安全性に問題はないかを調べる。臨床試験は国内計4カ所の医療機関で行われ、10月19日からは国内でワクチン接種が始まる。
 今年5月に国内で初めて新型インフルの感染が確認されてから、ワクチン量の不足が不安視されてきた。厚生労働省は国産ワクチンの製造量を、当初の約1800万人分から約2700万人分に上方修正。医療従事者や基礎疾患者、妊婦、幼児、乳児の保護者、小学生、高齢者、中高生の順で優先的に接種すると決めた。
 同時に海外産ワクチン5000万人分の購入契約にこぎつけた。合計で優先接種対象の5400万人を超える7000万人分以上を確保。ここにきて国民2人に1人が接種できるめどがついた。
 こうした動きの中で厚労省の鳥インフルエンザウイルスワクチン研究班員だった国立病院機構三重病院(津市)の庵原俊昭院長は「ワクチンは高い効果があるが、限界はあることを理解して接種してほしい」と話す。
 ワクチンは発症予防、重症化や死亡の防止には一定の効果がある。ただ、接種後に発病する人も一定数いる。そもそも接種は任意。国内で季節性インフルのワクチン接種率は30%前後と先進国では低い。1994年の法改正まで児童の集団接種が行われたが、その後は効果や副作用の批判から接種率が激減した経緯もある。
 データでは1回接種して抗体ができるまで約1週間。効果が出るのは流行のピーク後になる可能性もある。厚労省は「最初のピークで国民の2割が感染しても、8割はまだ。その後の流行を抑える意味はある」と説明する。
 副作用について季節性のワクチンでは発熱やアレルギー反応、脳症などが報告されたが、100万人あたり1~2人という。国は副作用が出た場合、国内生産分だけでなく海外分も対象とする補償制度や、2回で6150円の接種費の負担軽減措置も検討している。
 もちろん、有効な対策はワクチンだけではない。日本感染症学会は「タミフルなどの抗インフルエンザ薬の投与が重症化を防ぐ」と指摘。感染したら早期に治療するという基本をいかにきっちり行うか、が重要なのは変わりない。


6.パンデミックインフルエンザワクチンの現状
パンデミック(H1N1)2009-briefing note その11
IDSC2009年10月5日(3日更新)

オーストラリア、中国、アメリカの監督機関は、パンデミックインフルエンザワクチンを認可し、日本やヨーロッパの国々も間もなくこれに続く見込みである。認可までの時間は、各国の手続きに要する時間、これまでに認可されてきたワクチンの種類、企業の監督機関に提出する書類準備の進捗状況により左右される。
生産能力
2009年5月、WHOは条件が整えば、世界中で最大、約年間50億ドーズのパンデミックインフルエンザワクチンが生産可能と推計した。その後、生産量に関する良い情報と適切なワクチン成分が得られた。
WHOは現在、世界中のパンデミックインフルエンザワクチンの生産量を、おおよそ年間30億ドーズと推定している。この推計値は当初の予定より少ないが、治験の初期段階の結果を見ると、ワクチン1回接種で健康な成人と年長小児が疾病予防に十分な免疫力を獲得できることが示唆され、その結果、現状の予定生産量の倍の人々を守ることができることになる。
この生産量では、新型で感染能力をもったウイルスから、事実上感染性のある全人口(68億人)をワクチン接種により予防するには不足している。世界のインフルエンザワクチン生産能力は限られており、不十分で、増産される気配はない。
パンデミックワクチンはアウトブレイク前あるいはピーク近くに、他の予防戦略と合わせて導入されると最も有効である。監督機関とワクチン製造者双方がワクチン生産量をできる限り増やせるように多大な努力を行なっている。
多くの経済的に裕福な国は、事前に企業と契約し、全国民に接種できるだけのワクチンを確保している。しかし、低あるいは中所得国では、財政的に厳しい状況にあるため、限られたワクチンを入手することは困難である。これらの国へのワクチンの供給は企業や他の国々の寄付に寄与するところが大きい。
途上国でのワクチン接種の可能性
先週、アメリカに呼応してオーストラリア、ブラジル、フランス、イタリア、ニュージーランド、ノルウェー、スイス、そしてイギリスが途上国へのパンデミックワクチンの寄付を表明した。他の国々からの同様なサポートは、大歓迎であり、期待している。
WHOはこれら寄付されたワクチンの分配を調整している。以前、WHOは地域事務局や各国事務局を通じて、寄付が無ければパンデミックワクチンを入手できない国を調査した。
フィールド接種計画、ワクチン、ロジスティックの専門家がWHOのSHOCルーム(訳注:Center for Strategic Health Operations; 戦略的行動本部)に集って作業を進めている。最初の段階として、90カ国以上の国々におおよそ3億ドーズのワクチンを分配する。
寄付されたワクチンの最初の出荷分の分配は11月に開始されると予測されている。WHOは、医療従事者の早期のワクチン接種を推奨している。
ワクチンの安全性
各国の医薬品の監督機関は、ワクチンを承認する前に注意深くワクチンによって得られるメリットと既に知られている、あるいは疑われている有害事象について検証すべきである。なぜならパンデミックウイルスは新しく出現してきたばかりである為、ワクチンの免疫応答と安全性の基本データ収集のため、今現在、実験室での研究や治験が行なわれているからである。今日までにまとめられている治験のデータでは、パンデミックワクチンは季節性インフルエンザワクチンと同程度安全であるとされている。
ワクチン接種後の副反応も季節性インフルエンザワクチンで見られる結果と同程度であると予想される。最も良く認める副反応は接種部位の局所反応(疼痛、腫脹、発赤)と、全身性反応(発熱、頭痛、筋肉痛または関節痛)である。これらの症状を呈したほとんどの人の症状は軽く、治療を必要とはせず、1~2日で軽快する。
しかし、たとえ大規模の治験を行なっても、何億の人にワクチンを接種することで認められるような稀に起こる事象を突き止めることはできない。
WHOは、パンデミックワクチンを導入する全ての国々に対して、安全性のモニタリングと、有害事象発生時の報告を強化するように助言する。多くの国は、既にワクチンの安全性をモニターするシステムを既に導入している。
市販後サーベイランスのデータを国際的に共有することは、ワクチン政策の変更が必要かどうか、リスクと有益性の評価に基づくアセスメントや決定に重要である。WHOはこれらの有害事象報告と迅速なデータ収集のために、共通の標準プロトコール開発を完了し、その結果をウェブサイトを用いて各国と情報を共有する。


7.胃がんの再発7割予測、がんセンターが新システム
読売新聞社2009年10月5日

胃がんの手術後の再発を7割の確率で予測できるシステムを、国立がんセンター研究所の佐々木博己室長らが開発した。
 手術後に隣接する腹膜への転移が見つかる例が多い胃がんの再発防止に役立つものと期待される。
 推定10万人いる全国の胃がん患者のうち、手術前に転移したがんが術後に見つかる「再発」は全体の3~4割。その原因の半数以上は胃に隣接する腹膜への転移が占める。胃がん摘出前に、顕微鏡で転移の有無を調べているが、小さいがん細胞を見つけ損ね、数年後に再発することが多い。
 佐々木室長らは、腹膜細胞内の胃がんに特徴的なRNA(リボ核酸)だけに付着する物質と、その有無を判別する装置を開発。これを使い、進行した胃がん患者191人を手術後に調べた結果、顕微鏡でがん細胞が見つかった患者34人全員に加え、顕微鏡では見つからなかった36人でも陽性反応が出た。計70人のうち4年目までに再発したのは52人。再発患者は全体で75人おり、その7割を予想できた計算になる。
 佐々木室長は「腹膜のがんの位置はまだ特定できないので摘出は難しいが、胃がん手術と腹膜の抗がん剤治療を併用すれば、再発は減らせる」と話している。


8.「生活楽しむ男性」脳卒中などになりにくい
読売新聞社2009年10月5日

生活を楽しむ意識の高い男性ほど脳卒中や狭心症などを発症する危険性が低いことが、厚生労働省の研究班の調査でわかった。
 岩手、長野など8県の40~69歳の男女12万人を12年間追跡調査したもので、女性では明確な差は見られなかった。
 琉球大学の白井こころ准教授(公衆衛生)らは、調査対象のうち、循環器疾患やがんの既往症がない約9万人のデータを分析。アンケートで「生活を楽しんでいますか?」と尋ね、楽しむ意識を高・中・低に3分類した。その結果、生活を楽しむ意識が低い男性は、脳卒中を発症する危険性が1・22倍、死亡率は1・75倍高かった。狭心症、心筋梗塞を発症する危険性は1・28倍で、死亡率は1・91倍だった。
 白井准教授は「生活を楽しむ前向きな人はストレスへの対応が上手なため、脳卒中などになりにくいのだろう。男性はストレスに弱い傾向があり、効果がはっきり出たと考えられる」と分析している。


9.どうする「未病」:子どもにしのびよる口腔機能の変化~かむ機能の低下、栄養の偏り
毎日新聞社2009年10月5日

 最近、若者の顔が小顔になってきたといわれています。実際、街を歩いていると、顔が小さく、あごは三角形というシャープな顔立ちの人が多いことを実感します。
 このような顔立ちは若い女性のあこがれにもなっているようです。しかし、「口腔の健康」という視点から考えた場合、小顔には問題点もあるのです。これまでも繰り返しお話ししてきましたが、食べ物をきちんと「咀嚼」し、消化吸収を効率よく行うためにはあごや周囲の筋肉の働きが重要です。しかし、小顔の人は上あごに比べて下あごが小さく、かむことをつかさどる咬筋の発達が未熟である傾向があります。

V字歯列。右は矯正治療後
 また、正常なあごを持つ人では、歯並びはあごの形にそったU字形になりますが、小顔で三角形のあごをしている場合、歯並びはV字形になっていることが多いのです。そのため、中の体積が狭くなり、舌も十分に動かせなくなってしまう可能性があります。この結果、栄養の吸収消化がスムーズにいかなくなるのです。
 分子整合栄養医学(健康、病気の概念を分子レベルで栄養素の種類と適量を明確にした科学)においては、消化吸収が不十分である場合、特に鉄分の不足が起こりやすく、貧血やうつ状態を起こしやすいといわれています。若い女性には鉄欠乏性の貧血が多いことが知られていますが、これまで述べてきたような顔貌の変化による口腔機能低下の問題が一因になっていると考えられています。
 じょうぶなあごや咬筋の形成には小さいころからの食習慣がとても大切で、スルメなど硬いものでもできるだけ食べさせることです。全身の筋肉を発達させる、という意味では外遊びをなるべくさせてあげることも必要でしょう。こうしたことを機会があるごとにお母さん方にお話ししています。なお、赤ちゃんには母乳栄養がよいといわれています。おっぱいを吸うときにあごやその周囲のあらゆる筋肉を使うためです。
 現代の子どもたちは、小さなころからファストフードやインスタント食品をひんぱんに口にする傾向があり、気付かないうちに過剰にカロリーを摂取してしまっていることがあります。一方で、そうした食事にはビタミンやミネラルが不足しており、これらの栄養補給が追いついていない可能性もあります。やせた土壌で作られた食材の氾濫などもこうした事態に追い打ちをかけています。専門家の中には、ミネラルやビタミンの不足が「キレる子どもをつくる原因になっている」と指摘する声もあります。
 いずれにしても、このままでは子どもたちの将来が危ういことは確かです。栄養状態に問題があるまま大人になれば、さまざまな病気を発症するリスクが高まることは必至です。健康長寿を達成するために、私たちは昔の生活習慣、食生活から多くのことを学ぶ時期に来ています。日本顎咬合学会では、口腔だけでなく、からだ全体の健康という視点から、子どもたちの将来を考える活動に取り組んでいきます


10.手の震え「書痙」治療に道…オン・オフ可能な装置開発へ
読売新聞社2009年10月5日

脳内の機能異常に電気刺激

 「書痙」という神経症状がある。普段の生活では、何の異常もないが、字を書こうとする時だけ、手がけいれんを起こしたり、硬くなったりする。作家など字を書く職業の人に多い厄介な病だが、BMIとの連携で、治療法が見えつつある。
 日本大医学部付属板橋病院(東京・板橋)。同大脳神経外科主任教授の片山容一・医学部長を中心に書痙を含む、局所的な不随意運動を治療するプロジェクトが進められている。
 基本となるのは、手足が自らの意図に反して震えるなど、持続的な不随意運動を招くパーキンソン病やジストニアといった神経難病の患者らに効果的な「脳深部刺激療法(DBS)」だ。片山医学部長によると、パーキンソン病患者では脳内の奥深い視床下核という部位の電気信号が乱れている。

 DBSの装置は、バッテリー内蔵の電気パルス発生装置と極小電極からなる。磁気共鳴画像(MRI)で患者の神経や血管などの位置を詳細に調べ、それぞれの患者独自の〈脳内地図〉を作製。地図に沿って、目的の場所に電極を挿入し、電気刺激を与える。
 パルス発生装置は、心臓のペースメーカーのようなもので、症状が体の左右に出ている場合は、装置二つをそれぞれ両わきの下に植え込む。片山医学部長は、これまで国内最多の千数百例の手術を手がけている。
 劇的な効果はいくつも報告されている。4年前、テレビ番組でも紹介された千葉県在住の60歳代のパーキンソン病患者の女性は、夫の介護なしでは歩けない状態だったが、DBSを行うと、すぐに震えが止まった。病院の廊下を軽やかに歩けるようになり、夫は「信じられない」と、目を丸くした。女性は今も元気で暮らしているという。
 しかし、パーキンソン病のように常時、電気刺激を与え続けても良い病気とは異なり、書痙の場合は、何かを書こうとした時にだけ刺激する「オンデマンド(注文対応)」のDBSが必要になる。脳活動から書こうとする意図を読み取るBMIの技術が欠かせない。
 現在は、脳から筋肉に出ている指令のうち、書痙になりそうな場合は、DBSのスイッチを「オン」に、そうでない場合は、「オフ」にできる装置の開発を進めている。脳卒中で、身体がまひした患者のリハビリへの応用も検討中だ。
 片山医学部長にはほろ苦い記憶がある。DBSは、1979年に脳卒中後の感覚異常で、体のどこも悪くないのに、脳が激しい痛みを感じる中枢性疼痛の患者への治療でスタートし、90年代になってパーキンソン病患者に実施されるようになった。それまでは、病変部に電極を当て、そこを焼く「破壊術」が一般的だったが、患者だったすし職人が、「震えは止まったけれど、微妙な握り具合が駄目で、すしが握れなくなりました」と、店をたたんだ。
 「わずかとは言え、正常な脳機能を犠牲にしてしまった」という思いが、DBSの研究に駆り立て、今は、BMIを活用したオンデマンドDBSの確立を目指す。書痙への臨床応用は、5~10年先になるという。
 BMIへの懸念もある。「脳を変え、人格を変えてしまうリスクがある。脳の働きと人格を考える倫理的な議論が必要だ」と語る。


11.NECなど、手術器具をICタグで管理 医療事故防止
日本経済新聞社2009年10月5日

 NECなどの産学チームは、ICタグ(電子荷札)を活用してメスなどの手術用器具を管理するシステムを開発した。手術の前後などでも多数の器具を効率よく管理。医療従事者の負担を減らし、医療事故を防げるという。9月に臨床試験を始めており、来年春をメドに事業化する。
 ICタグ開発のKRDコーポレーション(神奈川県大和市)、東京医療保健大学と共同開発した。KRDコーポのセラミックス製タグを器具に取り付け、タグ読み書き装置や管理ソフトと組み合わせた。器具をまとめて装置に載せれば本数や種類を確認でき、使用や滅菌の履歴も管理できる。基本システムの価格は約300万円を想定。タグは1個250円で提供する。


12.サージカルマスクの性能はN95マスクに劣らない
日経メディカル2009年10月5日

(JAMA誌から)看護師におけるインフルエンザ感染予防効果を比較した結果
新型インフルエンザ(2009 H1N1)のパンデミックは、先進国においてもN95マスク不足をもたらす危険性がある。そこで、カナダMcMaster大学のMark Loeb氏らは、病院で発熱性呼吸器疾患の患者を担当する看護師を対象に、サージカルマスクとN95マスクのインフルエンザ感染率に対する影響を比較する非劣性試験を行った。この結果、通常の患者のケアにおいては、サージカルマスクはN95マスクに劣らない性能を持つことが示された。詳細は、JAMA誌電子版に2009年10月1日に報告された。
 医療従事者の感染予防において、N95マスクの果たす役割は大きい。しかし、N95マスクが十分に利用できない国は少なからず存在する。また、N95マスクを日常的に利用している国でも、インフルエンザパンデミックの間は不足が懸念される。にもかかわらず、代用としてサージカルマスクを使用した場合の、インフルエンザ感染予防効果に関する情報はこれまでほとんどなかった。
 そこで著者らは、ハイリスクの医療従事者をインフルエンザ感染から守る効果に焦点を当てて、サージカルマスクとN95マスクを比較する無作為化非劣性試験を行った。
 2008年9月23日~12月8日にカナダ・オンタリオ州の8カ所の第三次医療機関(大学病院6施設:310~400床、市中病院2施設:256~400床)の救急部門、内科部門、小児科部門にフルタイム(就労時間は週に37時間超)で勤務する看護師446人を登録。平均年齢は36.2歳、94%が女性だった。
 登録した看護師を、無作為に、個々人の顔にフィットすることが十分に確認されたN95マスク(221人)またはサージカルマスク(225人)に割り付けた。サージカルマスクは、各病院が用意している製品をそれぞれの製造会社の指示通りに使用する、とした。
 2008~09年のインフルエンザ流行期が始まった時点で、発熱のある呼吸器疾患の患者のケアを担当する際には、割り付けられたマスクを使用するよう看護師に指示した。グローブとガウンは通常通り着用した。
 試験は、インフルエンザシーズンの終わりまで継続される予定だったが、2009 H1N1の流行が始まった時点で、オンタリオ州保健局が、発熱性呼吸器疾患患者のケアを担当する人々にN95マスクの着用を勧告したため、2009年4月23日にこの試験は中止された。
 主要アウトカムは、インフルエンザ確定診断例(PCRで陽性または赤血球凝集抑制〔HI〕試験で抗体価4倍以上)の発生率に設定。N95マスクと比較したサージカルマスクの非劣性を検証するため、あらかじめ非劣性のマージンを「95%信頼区間の下限が-9%」に設定した。
 2次評価指標は、インフルエンザ以外のウイルスの感染率に設定。パラインフルエンザウイルス(1型、2型、3型、4型)、RSウイルス(A型、B型)、アデノウイルス、メタニューモウイルスなどをPCRにより同定した。
 季節性インフルエンザワクチンの接種率は、サージカルマスク群30.2%、N95マスク群28.1%で差はなかった。
2009年1月12日~4月23日の追跡期間に、サージカルマスク群13人、N95マスク群11人が様々な理由により脱落した。
 この間のインフルエンザ感染は、サージカルマスク群50人(23.6%)、N95マスク群48人(22.9%)で、絶対リスク差は-0.73%。95%信頼区間は-8.8%から7.3%(p=0.86)となり、サージカルマスクの非劣性が示された。
 PCRで感染が確認された看護師は、サージカルマスク群6人(2.8%)、N95マスク群4人(1.8%)。絶対差は-0.93%(-3.82%から1.97%、p =0.75)で、やはり有意差は見られなかった。
 インフルエンザ以外のウイルスの感染率についても、サージカルマスク群とN95マスク群の間に差はなかった。また、インフルエンザ以外のウイルスに感染した患者の中にインフルエンザ様疾患とみなされる症状を示した看護師はいなかった。
 呼吸器疾患により受診した看護師は、サージカルマスク群6.1%、N95マスク群6.2%(p =0.98)で差はなかった。
 このように、オンタリオ州の第三次医療機関の看護師のインフルエンザ感染予防において、サージカルマスクはN95マスクに劣らない効果を持つことが明らかになった。この結果は、インフルエンザの感染に関わる飛沫のサイズがサージカルマスクでほぼ防げるレベルであることを示唆する。また、サージカルマスクの問題の一つは顔にフィットしないことだと考えられてきたが、それもまた、感染率に有意な影響を与えない可能性が示された。
 ただし、気管内挿管や気管支鏡検査などエアロゾルを産生するリスクの高い手技を行う場合には、N95マスクの使用が賢明だろう、と著者らは述べている。
 原題は「Surgical Mask vs N95 Respirator for Preventing Influenza Among Health Care Workers」


13.血管手術時のスタチン術前投与で心筋虚血イベントが半減:DECREASEIII試験
CareNet2009年10月5日

DECREASE(Dutch Echocardiographic Cardiac Risk Evaluation Applying Stress Echocardiography)III試験の結果、周術期のフルバスタチン療法は、術後30日以内の心血管疾患転帰を改善することが報告された。スタチン療法が術後転帰を改善するという仮説を、大規模なプラセボ対照で立証した初の試験結果。オランダ・エラスムスメディカルセンターで、同手術部門のOlaf Schouten氏らにより行われた。
過去最大規模の二重盲検プラセボ対照臨床試験
DECREASEIIIは二重盲検プラセボ対照臨床試験。スタチンの投与を受けたことのない40歳以上の患者497例(腹部大動脈瘤修復、遠位大動脈回腸動脈再建、下肢動脈再建または頸動脈内膜切除が予定されている)を対象とし、術前に、β遮断薬に加え、徐放性フルバスタチン(extended-release fluvastatin)80mgを1日1回投与する群(250例)と同プラセボを投与する群(247例)に無作為化し行われた。
無作為化時と手術前に、脂質濃度、インターロイキン6(IL-6)濃度、C反応性蛋白(CRP)濃度が測定。
主要エンドポイントは、術後30日以内の心筋虚血の発生(定義づけは一過性の心電図異常、トロポニンT放出、またはその両方で定義される)とした。副次エンドポイントは、心血管系の原因による死亡と心筋梗塞の複合とした。
おもな結果は以下の通り。 
●術前投与が始められたのは、中央値37日前からだった。 
●投与開始後、無作為化時と手術前での測定の結果、総コレステロール、低比重リポ蛋白コレステロール(LDL)、IL-6、CRPの各濃度は、フルバスタチン群で有意に低下した。しかし、プラセボ群では変化がなかった。 
●主要エンドポイントの心筋虚血の発生は、プラセボ群で47例(19.0%)だったのに対し、フルバスタチン群では27例(10.8%)の発生だった。
 ・ハザード比:0.55(95%信頼区間:0.34~0.88、P=0.01) 
●副次エンドポイント(心血管系の原因による死亡と心筋梗塞の複合)発生は、プラセボ群が25例(10.1%)だったのに対し、フルバスタチン群は12例(4.8%)だった。
 ・ハザード比:0.47(同:0.24~0.94、P=0.03) 
●フルバスタチン療法に関連する有害事象発生率上昇は、有意には見られなかった。
[監修者のコメント]
本研究は、血管手術の約1ヵ月前からのスタチン投与により、周術期の心筋虚血イベントが約半減することをRCTで示した。周術期に全例β遮断薬を投与し、心筋保護を行った状況下において、スタチンの有用性が明確に示された意義は大きい。
この心筋虚血イベントは手術後2週間以内に大半が発生しているが、明確なスタチンの抑制効果が1週間以内で明らかになっている。
血管手術を受ける患者は動脈硬化が進行した心血管イベントのハイリスク患者であり、周術期に心筋梗塞を生じるリスクが高い。これまでの剖検成績から、周術期心筋梗塞の半数は、不安定化プラークの破裂によるもので、残りの半数は冠動脈狭窄病変による酸素の重要と供給バランスの不均衡によるものであることが知られている。
スタチン術前投与が、周術期の心筋虚血イベントをどのようなメカニズムで抑制したかは分からない。1つの可能性としては、投与から手術まで約1ヶ月間あり、周術時にはLDLコレステロールとCRPが著明に低下していることから、この間に不安定化プラークが安定化した可能性がある。さらに、内皮機能改善や抗血栓作用などのスタチンの持つ多面的効果が、このような臨床イベントの低下につながったことが考えられる。
周術期にはスタチンによる腎障害増悪が危惧されたが、本成績はそのリスクをはるかに上回る有用性がみられている。
([監修] 自治医科大学 循環器科 教授 苅尾七臣)
Schouten O et al. N Engl J Med. 2009; 361: 980-989.


14.80歳以上の超高齢者心房細動患者に対する抗凝固療法の出血リスクは許容できるか?
CareNet2009年10月5日

心房細動患者への経口抗凝固療法について、イタリア・フローレンス大学のDaniela Poli氏らは、出血リスクと年齢(80歳未満と80歳以上)との関連、および抗凝固療法の質(INR値を指標)との関連を評価した。結果、80歳以上と80歳未満の重大出血リスク比の差は2倍程度で、これまでの試験結果に比べ差は小さく、またINRの治療域値の判定では両群間で有意差はなかったという。Poli氏は「抗凝固療法がきちんと行われれば、80歳以上の高齢患者の出血リスクは低く抑えることができ、ワーファリンの予防的投与にベネフィットがあることを示すものだ」と結論した。
80歳以上の重大出血リスクは80歳未満の2倍程度
Poli氏らの調査背景には、特に80歳代の心房細動患者の脳卒中予防が公衆衛生目標として、ますます重視されていることがあった。
調査は、1998~2007年にかけて、心房細動でワーファリンによる経口抗凝固療法を行った783例で、前向き観察研究にて調査された。被験者のINR治療域値は、2~3だった。
おもな結果は以下の通り。 
●INR中央値が治療域だった患者は71%だった。治療域未満だった患者は14%、治療域を超えていた患者は15%だった。また各値について、80歳未満と80歳以上で比較したが、有意差はなかった。 
●追跡期間中、出血が見られたのは94例(3.7/100患者年)で、そのうち重大出血は37例(1.4/100患者年)、軽度出血は57例(2.2/100患者年)だった。
●重大出血の発生率については、80歳以上が1.9/100患者年に対し、80歳未満が0.9/100患者年だった(p=0.004)。重大出血に関する、80歳以上の80歳未満に対するオッズ比は、2.0だった。
●過去に脳虚血発作を起こしたことのある人の、そうでない人に対する重大出血に関するオッズ比は、2.5(95%信頼区間:1.3~4.8、p=0.007)だった。
[監修者のコメント]
本観察研究は、80歳以上の超高齢者心房細動患者に対する抗凝固療法による重篤な出血(脳出血および消化管出血)リスクは臨床的に許容できる範囲内であることを示した。
心房細動患者の抗凝固療法適応のリスク評価には、高齢(75歳以上)が入っている。高齢者こそ抗凝固療法の有用性が期待できるが、同時に出血リスクも増加することが危惧される。そのリスクを考慮して、わが国の日本循環器学会の心房細動治療ガイドラインでは70歳未満の目標INRは2.0-3.0であるのに対して、70歳以上では1.6-2.6と少し緩めコントロールが推奨されている。
本研究では、80歳以上の超高齢者の重篤な出血イベントの発症リスクは100人年あたり1.9件程度であった。80歳未満の群に比較した相対リスクは、約2倍であった。このリスクが、受け入れられるかは、塞栓リスクの大きさとのバランスによる。
本研究は2-4週間間隔でINRをモニターしており、注意深い抗凝固療法がおこなわれている。また、本研究ではTIAや脳卒中の既往が、重篤な出血イベントのリスクを2.5倍増加させている。
今後、80歳以上の超高齢者人口が急増している我が国において、心房細動の管理は、ますます重要になってくる。
([監修] 自治医科大学 循環器科 教授 苅尾七臣)
Poli D et al. J Am Coll Cardiol. 2009; 54: 999-1002.


15.学会ダイジェスト:第45回欧州糖尿病学会

1) インスリン アスパルト混合製剤は1日2回から始めた方が有効─IMPROVE Studyから

二相性インスリンアナログ製剤であるインスリン アスパルト混合製剤の使用は、1日1回よりも1日2回から始める方が効果が高い──。アスパルト混合製剤の有効性と安全性の情報を収集する目的で11カ国5万8000人の2型糖尿病患者を登録して行われた大規模観察研究であるIMPROVE Studyのサブ解析からこのような結果が明らかになった。9月30日から10月2日までオーストリア・ウィーンで開催された第45回欧州糖尿病学会(EASD)でオランダ・EHM Clinic HoofddorpのRobert J Ligthelm氏が報告した。
 IMPROVE Studyでは既に、アスパルト混合製剤の使用によって以前の治療内容にかかわらず血糖コントロールが改善することが示されている。今回報告されたサブ解析はアスパルト混合製剤の最適な使用回数を探るために、登録時および26週後の、1日における使用回数と有効性および安全性の関係を調べたものだ。
 解析の対象となったのは、IMPROVE Studyの登録患者のうち、登録時(ベースライン)と26週後において、アスパルト混合製剤を1日に何回打ったかが記録されている4万1436人。注射回数が1日1回の場合をOD、1日2回をBID、1日3回をTIDとし、ベースラインから26週後に1日の注射回数がどのように変化したかで5群に分けし、有効性と安全性を比較した。
 各群の内訳は、「OD→OD」2943人、「OD→BID」2613人、「BID→BID」3万3880人、「OD→TID」141人、「BID→TID」1859人。ベースラインでBIDの2群はODの3群よりも糖尿病罹病期間が短い傾向にあった。
 5つの群すべてで、26週後のHbA1c値、空腹時血糖値、食後血糖値はベースラインから有意に減少した。ベースラインにおけるアスパルト混合製剤の使用回数による効果の差をみると、BIDの2群はODの3群よりも血糖コントロール指標の減少の程度は大きかった。「HbA1c<7.0%」の達成率は、ベースラインがBIDの2群では50%を超えていたが、ODの3群では約40%だった。26週後においては、使用回数による血糖コントロールへの影響は確認されなかった。
 低血糖については、5群すべてにおいて重大な低血糖は有意に減少。重大でない低血糖については、OD→OD群、BID→TID群で有意な減少が確認された。
 これらの結果からLigthelm氏は、「1日2回注射で開始する方が1回よりも効果は高いが、全体としては使用回数にかかわらず、アスパルト混合製剤は有効な治療法であるといえる」と総括した。


2) 経口糖尿病薬治療患者へのインスリン アスパルト混合製剤併用はインスリン グラルギンの併用に比べHbA1c値を下げる

二相性インスリンアナログ製剤であるインスリン アスパルト混合製剤の1日1回夕食前投与と、インスリン グラルギンの1日1回就寝前投与の有効性を2型糖尿病患者で比較した試験の結果が、9月30日から10月2日までオーストリア・ウイーンで開催された第45回欧州糖尿病学会(EASD)で報告された。HbA1c値の低下はインスリン アスパルト混合製剤の方が有意に大きいという結果で、ポーランド・Centralny Szpital Kliniczny MSWIAのEdward.Franek氏が発表した。
 比較試験は15カ国480人の2型糖尿病患者を対象としたOnceMix試験。患者スクリーニング後、試験導入期間としてメトホルミン+グリメピリド4週間投与の後、インスリン アスパルト混合製剤を夕食前に併用する群とインスリン グラルギンを就寝前に併用する群とに無作為に割り付けた。プライマリーエンドポイントは、インスリン投与開始から26週後のHbA1c値。
 ベースラインにおけるアスパルト混合製剤群の患者数は231人で、平均年齢56歳、HbA1c平均値は8.5%、糖尿病の平均罹病期間は9.1年。グラルギン群の患者数は238人で、平均年齢56歳、HbA1c平均値は8.5%、糖尿病の平均罹病期間は9.5年だった。
 ベースラインから26週後のHbA1cの平均変化量は、アスパルト混合製剤群で-1.41%、グラルギン群で-1.25%となり、グラルギン群に比べてアスパルト混合製剤群は有意にHbA1cが改善していた(両群の差の95%信頼区間は、-0.30~-0.02、p=0.029)
 毎食前、毎食2時間後および就寝時を測定ポイントとした自己測定による平均血糖値を比べると、両群ともにどのポイントも26週時点ではベースラインよりも減少した。26週時点において両群を比べると、夕食後2時間後および就寝前で、アスパルト混合製剤群の血糖値はグラルギンよりも有意に低かった。
 低血糖の発生については両群ともに頻度は低く、重大な低血糖はアスパルト混合製剤群で3例、グラルギン群で2例。重大ではない低血糖を経験した患者の割合は、アスパルト混合製剤群では48.5%、グラルギン群では41.6%で、グラルギン群に対するアスパルト混合製剤群の低血糖の相対リスクは1.4(p=0.034)だった。午前0時から午前6時の夜間に限ると、アスパルト混合製剤群の相対リスクは2.4(p=0.003)と高くなった。
 なお、ベースラインにおけるインスリンの1日投与量は両群ともに0.18 U/kgだったが、26週後にはアスパルト混合製剤群は0.32 U/kg、グラルギン群は0.29 U/kgに増加していた。
 アスパルト混合製剤群で頻度が高い傾向がみられた低血糖について、Franek氏は「絶対的な発生率は低いため、双方ともに忍容性と安全性は高い」と説明し、「HbA1cを下げるという観点から、アスパルト混合製剤はグラルギンに対する優位性を証明した」と結論づけた。


16.学会ダイジェスト:第32回日本高血圧学会

1) 糖尿病合併高血圧患者の糖・脂質代謝、腎機能をシルニジピンが改善

糖尿病を合併した高血圧に対しては厳格な降圧治療が必要とされる。糖尿病合併高血圧患者の降圧治療ではレニン・アンジオテンシン系抑制薬が第一選択薬として用いられるが、単剤での降圧目標達成は容易でなく、降圧効果の優れたCa拮抗薬が併用されることが多い。
 その場合、どのCa拮抗薬を選択するかが問題となるが、L型とN型Caチャネルを阻害するCa拮抗薬は優れた降圧効果とともに交感神経の過剰な興奮を抑制し、糖尿病患者のアルブミン尿を改善する作用を示すことが報告されており、糖尿病合併高血圧の治療に適したCa拮抗薬として期待を集めている。
 北里大学医療衛生学部リハビリテーション学科の増田卓氏らは、糖尿病合併例を含む高血圧患者の治療におけるL/N型Ca拮抗薬シルニジピンの有効性を検討し、糖・脂質代謝、腎保護の観点からみて有用性が認められると報告した。研究成果は10月1日から3日に滋賀県大津市で開催された第32回日本高血圧学会総会で発表された。
 研究グループは、外来通院中の本態性高血圧患者77例を、糖尿病合併の有無により2群に分け、L/N型Ca拮抗薬としてシルニジピン10-20mg/日を、L型Ca拮抗薬としてアムロジピン2.5-7.5mg/日をそれぞれ8カ月間投与し、クロスオーバー法で比較した。
 それぞれの投与期間の終了時に、脂質代謝の指標として血清総コレステロール、LDL-コレステロール、HDL-コレステロール、中性脂肪、糖代謝の指標としてHbA1c、空腹時血糖、HOMA-R、腎機能の指標として推算糸球体濾過量(eGFR)、尿中アルブミン/クレアチニン比、レニン活性、アルドステロンを測定した。
 試験期間中は降圧目標(130/85mmHg未満)を達成するため、Ca拮抗薬以外の降圧薬も併用されたが、使用頻度が最も高かったのはアンジオテンシン2受容体拮抗薬(ARB、39.0%)で、以下、β遮断薬(33.8%)、利尿薬(27.3%)、ACE阻害薬(16.9%)の順だった。これらのうちβ遮断薬の使用頻度は糖尿病合併群が非合併群に比べて低かったが、他の薬剤の使用頻度には糖尿病合併の有無で明らかな差はみられなかった。試験期間中、個々の患者における併用薬の種類や投与量の変更は行っていない。
 全被験者でみた血圧と心拍数は、シルニジピン投与時130±10/77±8mmHg、64±7拍/分、アムロジピン投与時130±9/78±8mmHg、65±8拍/分と同等であった。糖尿病非合併群(42例)において、シルニジピン投与時にはアムロジピン投与時に比べインスリン抵抗性の指標であるHOMA-Rが有意に低下した。糖尿病合併群(35例)において、シルニジピン投与時にはアムロジピン投与時に比べ血清中性脂肪が有意に低下した。また、シルニジピンはアムロジピンに比べ、腎機能指標のeGFRを有意に上昇させ、レニン活性と尿中アルブミン/クレアチニン比を有意に低下させた。
 本研究の特徴は、高血圧患者を糖尿病合併の有無により2群に分けてL/N型Ca拮抗薬の有効性を検討したことだが、増田氏は、シルニジピンが糖尿病を合併した高血圧患者において脂質代謝と腎機能を改善し、糖尿病を合併していない高血圧患者において糖代謝を改善したことから、本剤が糖尿病合併高血圧の治療だけでなく、糖尿病を合併しない高血圧患者における糖代謝改善の観点からも有用性が期待できると述べた。


2) シルニジピンは心臓の自律神経バランスに好影響を及ぼす

心臓交感神経活性の上昇は高血圧患者の予後を悪化させることが知られている。従来の短時間作用型Ca拮抗薬は降圧に伴い交感神経活性の反射性亢進をきたすことが知られているが、この副作用は降圧作用が緩やかに発現する長時間作用型Ca拮抗薬が登場したことによりかなり軽減された。しかしそれに関する懸念はまだ完全に払拭されたわけではない。
 近年、Ca拮抗薬の中には、血管の収縮に関係するL型Caチャネルとともに交感神経終末に存在するN型Caチャネルを阻害するものが使用されるようになり、交感神経活性を抑制する作用が期待されている。京都大学人間健康科学系の猪飼亜希子氏らは、高血圧患者を対象にL/N型Ca拮抗薬シルニジピンの心臓交感神経活性に及ぼす影響を検討し、その効果はL型Ca拮抗薬より好ましい影響を及ぼすことを明らかにした。研究成果は滋賀県大津市で10月1日~3日に開催された第32回日本高血圧学会総会で報告された。
 対象は、L型Ca拮抗薬アムロジピンを6カ月以上、単独で服用している高血圧患者18例である。被験者を2群に分け、1群(8例)にはアムロジピン(平均4.4mg/日)を継続投与し、他の1群(10例)についてはアムロジピンからシルニジピン(平均9.0mg/日)に変更して治療を続けた。
 試験期間は6カ月であった。アムロジピン継続投与群では6カ月間隔で2回、シルニジピン投与群では治療薬変更前と変更6カ月後に血圧、脈拍数を測定するとともに、心拍変動のスペクトル解析を行った。スペクトル解析では、中間周波数成分と高周波数成分の比(LF/HF)を心臓交感神経活性の指標、高周波数成分のトータルパワーに対する比(HF/TP)を心臓副交感神経活性の指標として検討した。
 両群の収縮期血圧と拡張期血圧は試験開始前から有意に変化することなく、前治療で達成された降圧レベルが試験期間を通じて維持された。脈拍数も治療前後で有意な変化を示さなかった。
 しかし、心臓交感神経活性の指標であるLF/HFは、アムロジピン継続投与群ではほとんど変化しなかったが、シルニジピン投与群では有意に低下した。また心臓副交感神経活性の指標であるHF/TPはアムロジピン継続投与群では治療前後で変化を示さなかったが、シルニジピン投与群のそれは有意ではないものの上昇する傾向を示した。
 L/N型Ca拮抗薬シルニジピンが高血圧患者の心臓交感神経活性を有意に低下させ、心臓副交感神経活性を軽度ながら上昇させたことから、猪飼氏は、L/N型Ca拮抗薬は心臓自律神経活性に好影響を与える可能性があると述べた。


3) 血管平滑筋細胞の老化が血管石灰化を引き起こす

予防・治療にスタチンとRhoキナーゼ阻害薬が有効な可能性
血管の石灰化は、血中カルシウムやリンが血管壁に付着して起きると考えられてきたが、血管平滑筋細胞(VSMC:vascular smooth muscle cells)が老化して骨芽細胞様に変化し、石灰化を引き起こしている可能性が新たに示唆された。ヒトVSMCを用いたin vitroの研究成果として、京都府立医科大学循環器内科の栗本律子氏らが、10月1日から3日に滋賀県大津市で開催された第32回日本高血圧学会総会で報告した。
 石灰化が起きている血管壁付近では骨特有の遺伝子群や細胞群が多く、これらが石灰化に関連している可能性が既に指摘されている。栗本氏らはヒトVSMCを長期間培養して老化VSMCを作り、若いVSMCと比較した。すると老化VSMCでは、石灰化領域が占める比率とカルシウムの質量比が顕著かつ有意に増強していた。
 骨関連遺伝子の発現を調べたところ、老化VSMCでは若いVSMCに比べ、骨芽細胞に特有なアルカリフォスファターゼ(ALP)と1型コラーゲンの発現が有意かつ大幅に増加しており、骨芽細胞の分化に必要な転写因子であるRUNX-2の発現も有意に増加していた。一方で、石灰化抑制因子であるMatrix Gla Protein(MGP)の発現は有意かつ著明に減少していた。
 次に、老化VSMCのALPと1型コラーゲンをノックダウンしたところ、いずれの場合も、石灰化は有意に抑制された。RUNX-2をノックダウンするとALP発現は有意に抑制されたが、1型コラーゲンの発現は有意な減少がみられず、老化VSMCの骨芽細胞様変化には、RUNX-2を経由する系と経由しない系の2つが関与していることが示唆された。
 また、老化VSMCと若いVSMCにスタチンとRhoキナーゼ阻害薬を作用させたところ、どちらの薬剤も老化VSMCのアポトーシスを阻害し、MGP発現を有意に増加させて石灰化を抑制することが確かめられた。
 栗本氏はこれらの結果から、加齢による血管石灰化に血管平滑筋細胞の老化が関与していること、予防や治療にスタチンとRhoキナーゼ阻害薬が有効である可能性が示唆されたとした。


17.プレスリリース

1) シェリング・プラウ、定量噴霧式アレルギー性鼻炎治療剤「ナゾネックス」112噴霧用を発売

・定量噴霧式アレルギー性鼻炎治療剤「ナゾネックス」112噴霧用新発売
・国内唯一の“1日1回投与の28日用”鼻噴霧用ステロイド薬の登場
 シェリング・プラウ株式会社(本社:大阪市中央区 社長:鳥居正男)は、平成21年10月5日、定量噴霧式アレルギー性鼻炎治療剤「ナゾネックス点鼻液50μg 112噴霧用」(Nasonex(R))(一般名:モメタゾンフランカルボン酸エステル水和物)を新発売いたします。
 ナゾネックスは、シェリング・プラウ・コーポレーション(本社:米国ニュージャージー州)が創製し、平成20年7月に国内で初めての1日1回投与が承認された鼻噴霧用ステロイド薬であり、同年9月に56噴霧用を発売いたしました。この発売から1年が経過し、14日間の投薬期間制限解除に伴うこの度の倍用量(112噴霧用)製剤の発売により、国内唯一、1日1回投与の28日用*鼻噴霧用ステロイド薬の登場となります。
 *通常、ナゾネックス112噴霧用を各鼻腔に2噴霧ずつ1日1回投与した場合
 日本におけるアレルギー性鼻炎の治療は、第2世代抗ヒスタミン薬といわれる経口薬での治療が中心となっていますが、ナゾネックスは第2世代抗ヒスタミン薬と比較してアレルギー性鼻炎の症状を有意に改善することが確認されています。
 ナゾネックスは確実な効果と高い安全性に加え、簡便な1日1回投与で十分な効果を発揮することから、これまで鼻噴霧用ステロイド薬を継続的に使用することに抵抗があった患者さんにもお使いいただきやすく、従来のアレルギー性鼻炎治療では満足な効果が得られなかった患者さんにも、さらなる改善が期待されます(**)。
 (**)文献:Mandl et al: Ann Allergy Asthma Immunol 1997,79(4),370.
 島根大学医学部耳鼻咽喉科の川内秀之教授は以下のように述べられています。
 「今まではアレルギー性鼻炎の治療というと、食事と同じようにお薬を経口的に服用することが患者さんに負担が少ないと考えていました。本来、匂いを嗅いだり、呼吸をしたりするルートとして鼻はある訳で、そこから薬を入れるという行為はどちらかと言えば敬遠されてきました。しかし、今年のスギ花粉のシーズンに、多くの患者さんから“今年の花粉時期は1日1回噴霧するだけで、症状がとても楽だった”という言葉を聞き、今までの鼻噴霧用ステロイド薬に対する認識を改めなければならないと感じました。全身・局所の副作用や眠気がなく、1日1回の投与で、“患者さんが効く”と実感してくれる鼻噴霧用ステロイド薬を、治療の中心として考え直さねばならないと感じています。」
 本剤は、承認までの国内臨床試験において1日1回投与でアレルギー性鼻炎に対する優れた有効性及び安全性が確認されています。また、本剤は局所投与のため全身への吸収が極めて低く、国内外の臨床試験及び海外の市販後データからも、本剤が副腎皮質機能に影響を及ぼすことを示唆する成績は得られていません。


2) クレハと田辺三菱製薬、田辺三菱製薬の慢性腎不全用剤「クレメジン」販売権取得に合意

・慢性腎不全用剤「クレメジン」の日本国内における販売権について
 株式会社クレハ(本社:東京都中央区、社長:岩崎 隆夫「以下、クレハ」)と田辺三菱製薬株式会社(本社:大阪市中央区、社長:土屋 裕弘「以下、田辺三菱」)は、クレハが創製した慢性腎不全用剤『クレメジン』について、田辺三菱が本年11月1日より日本国内における販売権を取得することに合意し、両社の間で契約を締結しました。
 『クレメジン』は現在、日本国内において、クレハが製造し、クレハより販売権を取得している第一三共株式会社(本社:東京都中央区、社長:庄田 隆「以下、第一三共」)が販売を行っておりますが、今般の田辺三菱による販売権の取得に伴い、田辺三菱と第一三共は、『クレメジン』の日本国内における販売に係る再許諾のための契約を締結しました。
 本年11月1日以降は、クレハが製造した『クレメジン』を田辺三菱が仕入れて第一三共に供給し、これまで通り、第一三共が販売及びプロモーションを実施してまいります。
 『クレメジン』は、高純度の多孔性球状活性炭からなる経口吸着炭で、消化管で分泌または腸管で産生される尿毒症毒素を吸着し、便とともに体外に排泄します。このことにより尿毒症症状の改善や透析導入の遅延をもたらす効果があり、保存期慢性腎不全に対して積極的な治療を行うための世界初の医療用医薬品として、国内においては1991年に発売され確固たる地位を築いています。

http://fcm-news.blog.so-net.ne.jp/2009-10-05

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