美容の極み

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その名は●愛ちゃん
♪さようなら さようなら 今日限り 愛ちゃんは 太郎の嫁になる 俺らの心を 知りながら 出しゃばりお米に 手を引かれ 愛ちゃんは 太郎の嫁になる(「愛ちゃんはお嫁に」詞:原俊雄、曲:村沢良介、歌:鈴木三重子、昭和31年)「愛ちゃん」、「愛」だったり「愛子」だったり。2007年の某生保会社調べの女の子の名前ベスト100には「愛」も「愛子」も入っていない。しかし「愛莉」「愛菜」「愛花」など「愛」の字のつく名前は10以上ある。女の子の「愛」は“永遠のベストセラー”いえるかもしれない。もちろんはじめは「愛子」から。上の歌詞にある「愛ちゃん」もおそらく「愛」ではなく「愛子」だろう。とにかく古典的な名前で、大正6年にはすでに「愛子」がランキング6位に入っている。以後、昭和7年までときどきランク落ちもあったが、ほぼベスト10の常連に。さすがに戦後はベスト10に姿を見せず、上の「愛ちゃんは太郎の嫁になる」が流行っても、「愛ちゃん」が増えることはなかった。ところが昭和53年から突如ベスト10に入ってくる。ただ今度は「愛子」ではなく「愛」。その数年前から梶原一騎原作の漫画「愛と誠」が雑誌に連載されたから? とにかくその後ずっとランクインで、昭和58年にはついにナンバーワン。そして平成2年まで8年連続で人気ナンバーワンの名前に。そのあとも平成9年までベスト10に留まった。ベスト100には入っていないが、いまでも「愛子」「愛」はそこそこ隠れた人気があるのではないだろうか。スポーツの世界ではモーグルの上村愛子がいるし、ゴルフの高須愛子がいる。また「愛」はピンポンの福原愛、バレーボールの山本愛(旧姓大友)、テニスの杉山愛がいる。歌の世界では。Jポップなら大塚愛とaiko だろう。なんて知ったようなことをいっても時折テレビのスポットCMか何かでみる程度でよく知らないんだなぁ、これが。演歌なら森山愛子。こちらは少しは知っている。いつもベイビーヴォイスのニコニコフェイス。これがなかなかうまいんだ。たしかレコード大賞の新人賞を獲ったのでは。そのほかシンガーソングライターの平松愛理。彼女も愛ちゃん。「フリージア」の奥村愛子もいたっけ。一字違いの奥村愛はヴァイオリニスト。昭和50年代のアイドルでは杉田愛子がいたけれど、その後演歌や抒情歌をうたっていた杉田愛子は同一人物? さらにはクラシックには郡愛子も。もう少し古くなると伊藤アイコが。昭和30年代後半から40年代はじめにかけてのポップシンガーで、カヴァー曲専門だった。「スピーディー・ゴンザレス」とか「レモンのキッス」とか「砂に消えた涙」とか。もう少し遡るとロカビリー・ガール朝比奈愛子。やっぱりカバーポップスばかりだった気がするけど、残念ながら代表曲がない。雪村いづみの妹ということでよくテレビには出ていたが。歌謡曲では以前「丘」でとりあげた平野愛子。「星の流れに」、「港の見える丘」。焼け跡がにおうような歌手(失礼か)。そして戦前から活躍していた同様の“歌のおばさん”安西愛子。一時自民党所属の国会議員をしていたのではないかな。そして戦前には斉田愛子が。カナダ生まれのオペラ歌手。イタリアへの留学経験もあり、太平洋戦争勃発前にはカナダでコンサートをするなど、戦争がなければワールドワイドで活躍した可能性も。ジャズやタンゴのポピュラー系では橘良江の名前でステージに立った。そのポップスでは戦前日本に最後に入ってきた洋楽といわれる「国境の南」SOUTH OF THE BORDERを歌っている。そのほか「才女」(アニー・ローリー)とか、タンゴの「イタリーの庭」などで美しいアルトを聴かせている。戦後も歌手として活動していたが、昭和29年44歳の若さで亡くなっている。そして「愛ちゃん」の歌。これもけっこうあるようだ。それも「愛子」が圧倒的。やはり演歌の世界で、山川豊、吉幾三がズバリ「愛子」をうたっている。また氷川きよしは「霧の中の愛子」を。ポップスからもひとつ。五輪真弓にも「愛子」がある。しかし、最もヒットしたといえば若い人には知らない歌で(多分)わるいが「愛ちゃんはお嫁に」だろう。この歌が大流行した年は「もはや戦後ではない」といわれた昭和31年。時代は「僕も私も」と地方の若者の都会への大移動が始まっていた頃だが「愛ちゃんはお嫁に」のような“地方発”の歌は多かった。「お花ちゃん」「リンゴ村から」(いずれも三橋美智也)、「早く帰ってコ」(青木光一)、「東京の人さようなら」(島倉千代子)「あゝダムの町」(三浦洸一)。なぜ「愛ちゃんはお嫁」が大ブレイクしたのか。それがわかれば、ヒット曲なんてかんたんに作れる。これは恋人を奪われた男の“恨み節”。しかしこれだけ寝取られたことをはっきりボヤいている歌は少ない。そんなところも新鮮だったのかもしれない。それと、登場人物。愛ちゃんのほかに、恋敵だった太郎が出てくるし、その恋を取り持ったらしい乳母かなにかのお米が出てくる。これだけ具体的に名前が出てくると、ストーリーにリアリティが生まれる。まぁ、すべて後付だね。うたっているのは鈴木三重子。福島県出身で、父親は民謡歌手の鈴木正夫。現在の二代目鈴木正夫は三重子の兄で一時歌謡曲のレコードをリリースしたことも。昭和29年に「相馬盆歌」でデビュー。翌年「むすめ巡礼」が小ヒット。「愛ちゃんはお嫁に」によってその名を全国に知らしめることになった。作曲の村沢良介はいまだ現役。2年前に「作曲生活50周年」を迎えた。この当時は村沢可夫という名の現役歌手だったそうだ。最近は島津亜矢の歌謡浪曲「一本刀土俵入り」「切られ与三郎」「沓掛時次郎」などを手がけている。この歌、もともとはレコード会社へ投稿してきた「狐の嫁入り」という歌で。それを詞、曲とも流行歌風に手直しして作り上げたとか。また、その数年後にはクリスタル・シスターズでカヴァー盤もでている。あまりのヒットぶりで、世の「愛ちゃん」は大喜び。鈴木三重子は当時の政治家藤山愛一郎や美容家・山野愛子と共に愛ちゃんの会を結成。最盛期、その数三千人に達したという。また“お決まり”で日活で映画化され、愛ちゃんには高田敏子が扮した。ところで、太郎という愛ちゃんが嫁ぐ相手の名前はわかったが、うたっている本人の名前は。これがのちに「次郎」だと判明する。鈴木三重子がやはり村沢良介作曲でその直後に「次郎さん待ってます」というアンサーソングを吹き込んだのだ。「太郎」に「次郎」って何だ兄弟だったのか……なんて。さらにそのあと鈴木・村沢コンビで「愛ちゃんの子守唄」もリリース。これには愛ちゃんに子供が授かったということでファンから祝電まできたとか。しかし、はたしてその子供は「太郎」の子なのか「次郎」の子なのか、結論がでないまま「愛ちゃんブーム」はフェイドアウトしていったとか。【付録】なんで「愛」は女ばかりなのか。いや、男にだっています。先述の藤山愛一郎がそうだし、アイ・ジョージは違うかもしれないけど、カーナビーツのアイ・高野はそうかもしれない。オックスの赤松愛は間違いない。はるな愛だって男だし……、でも芸名か。そんなわけで男にだって「愛」があってもいいよね。たとえば「愛雄」とか「愛之助」、「愛吉」、「愛太郎」、「愛三郎」なんていいと思うな。これはカッコいいんじゃないかな、「愛人」。「あいと」読めないか……。
http://momo5515.blog.so-net.ne.jp/2008-11-15

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